2012 Fiscal Year Annual Research Report
高速AFMによる膜輸送タンパク質―分子の動的構造解析
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12J00228
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山下 隼人 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高速原子間力顕微鏡 / 1分子イメージング / ナノ計測 / ABCトランスポーター / チャネル |
Research Abstract |
本研究は、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いてトランスポーターやチャネルタンパク質1分子の構造ダイナミクスをリアルタイムかつナノメートルスケールの分解能で直接可視化する事により、これら膜輸送タンパク質の機能発現過程や構造変化を捉え、その動作メカニズムを明らかにする事が目的である。本年度の研究実績を以下に記述する。 1.AFM観察に最適な膜輸送タンパク質試料の調整 高速AFMで高分解能に膜輸送タンパク質の構造を観察するためには、高純度な単離精製タンパク質の調整が必要となる。そこで、ヒト由来のタンパク質の発現で活性を持つ組み換えタンパク質を得られる利点がある哺乳動物細胞でABCトランスポーターであるCFTRチャネルの発現精製を行った。また、より大量の組換えタンパク質を発現可能な昆虫細胞を用いた発現系の構築も行い、他の幾つかのABCトランスポータ(ABCF2,ABCB1)の発現を確認した。 2.単離精製CFTRチャネル分子の高速AFM観察 1.の単離精製CFTR試料を用いて、生理溶液中における分子構造の高速AFM観察を行った。可溶化状態のCFTR分子をマイカ基板に吸着させ観察した所、円筒状の分子がペアになった構造が多数観察された。これらは、CFTR2量体であると考えられ、この結果は単離精製CFTRを用いた以前の電子顕微鏡による単粒子解析結果と一致した。また、この2量体分子の高分解能観察像において、分子の片側に突起状の構造、さらにその直下に高く盛り上がった構造が観察された。そこで、CFTRにおけるこれらのドメインを識別・同定するため、抗体を結合させた試料の高速AFM観察を行った。その結果、Rドメイン抗体が前者に、Flag(NBD付近のtag)抗体が後者付近に結合し、揺らいでいる様子を観察する事が出来た。よって、これらはそれぞれRドメイン、NBDドメインであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、特別研究員PDの受入研究室に移動し、新たに高速AFM測定装置を立ち上げ、順調に膜輸送タンパク質の観察を開始した。また、AFM観察のための試料調整にも取り組み、高速AFMによる膜輸送タンパク質の動的構造解析における基盤が整いつつある。これにより、可溶化状態の単離精製CFTR試料において、そのドメイン構造を高分解能観察する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度立ち上げた高速AFMにより、引き続き膜輸送タンパク質CFTRの観察を行う。また、CFTRだけでなく、発現系の立ち上げを開始した他のABCトランスポーター(ABCF2,ABCB1)に関しても単離精製を行い、高速AFM観察を始める。さらに、これらの単離精製された膜輸送タンパク質を脂質膜に再構成し、膜中での動的挙動を可視化する。
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Research Products
(5 results)