2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00254
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
溝口 優樹 國學院大學, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本古代史 / 社会統合 / 国家形成 / 氏族 / 仏教 / 大野寺土塔 / 行基 / 部制 |
Research Abstract |
2012年度は7世紀以前の地域史研究に関わる史料やそれに関わる地域の調査と行基関連施設の調査・研究を中心におこなった。前者に関連するものとしては、九州・中国地方を主な対象とし、具体的には清原古墳群、牛頸窯跡群出土刻書須恵器、宇佐神宮、防府天満宮、周防国分寺、佐波神社、長登銅山出土木簡、岡田山古墳群と岡田山一号墳出土大刀銘、出雲大社、土師百井廃寺、智識寺・鳥坂寺跡、百舌鳥古墳群等の実地調査・見学をおこなった。また、後者に関連するものとしては泉橋寺、山崎院跡、大野寺土塔、竹林寺の踏査をおこなった。いずれも古墳や窯址、寺社、官衙の立地などを把握するとともに、出土文字史料の実見をおこなうことができ、具体的な古代社会像を描くうえで有益な成果であった。 以上のフィールドワークと併行して、文献史料の分析に基づき、7世紀以前における倭王権の地域支配について研究を実施した。その一環として6~7世紀における三輪君氏と須恵器生産の再編について検討をおこない、その成果は溝口優樹「三輪君と須恵器生産の再編」(『国史学』206・207合併号、2012年)として公表した。さらにその成果をふまえて歴史学研究会古代史部会で「部制の成立とその構造」(2012年10月20日)と題する口頭報告をおこなった。これらの研究によって、倭王権による地域支配の具体的様相が明らかになりつつある。 また、行基関連施設、特に大野寺土塔の実地調査や文字瓦の分析をふまえて、土塔を造営した知識集団の労働編成や財源、その構造などについて検討をおこなった。その成果は溝口優樹「大野寺土塔の知識と古代地域社会」(『ヒストリア』2013年)として公表した。行基集団が形成される史的背景を明らかにするための足がかりとして意義があるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2012年度に計画をしていた5~7世紀における社会統合について、事例研究を1編の論文として公表し、現在はそれを総括する段階にある。また、2013年度に研究を進める予定であった、7~8世紀の知識(仏教を信仰する人々の集団)に関する社会統合について、一部研究に着手し、その成果として既に論文を公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は7世紀代の寺院址や文字瓦を中心として、日本列島各地、さらには韓国の仏教に関連する遺跡や史料に関する調査・分析を進実施する。そのうえで、7~8世紀の仏教信仰を介した社会統合のあり方について、これまでの研究成果をまとめ、総括的な研究を進める。さらに、これまで実施してきた研究成果の総括をおこない、日本古代史を通時代的に「社会統合」という観点から捉え直しを図る。
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Research Products
(4 results)