2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00297
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉野 義都 北海道大学, 大学院・工学院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ODSフェライト鋼 / 高温変形 / EBSD解析 / 回復・再結晶 |
Research Abstract |
[目的]今年度の目的は、ODSフェライト鋼の高温変形中の粒界部の変形挙動を特定することである。 [実験]本研究では15Cr系ODSフェライト鋼の冷間圧延材を用いた。冷間圧延材は縦方向と横方向のアスペクト比が10で圧延方向に伸ばされた組織でかつミクロンサイズの結晶粒を有するため、高温変形に対する粒界の影響を明瞭に観察することができる。そのため、冷間圧延ままの板材から引張試験片を結晶粒伸長方向に対し平行部と垂直部から採取した。引張試験は800℃で歪速度が10^<-1>~10^<-4>s^<-1>の条件で行った。その後、破断材を用いて、高温変形中の変形組織を観察した。 [結果]温度800℃で歪速度が10^<-1>s<-1>から10^<-4>s<-1>の条件下で引張試験を実施した。応力を結晶粒伸長方向に対し垂直にかけた場合の公称応力-公称歪曲線から、明瞭な加工硬化は現れず、歪速度が速くなるにつれて引張強さが上昇した。破断延びについては歪速度10^<-4>s^<-1>では30%程度であるのに対して、10^<-1>s^<-1>、10^<-2>s^<-1>では80%以上という大きな塑性歪を示し超塑性的な変形であることを見出した。破断した試験片の表面には、結晶粒界に対応する箇所でステップ状のすべり変形の痕跡を確認することができた。ステップの高さから高温変形の大部分は粒界部での変形であることを明らかにした。また、変形後の内部組織をEBSD解析した結果、変形前と比較して結晶粒内の回転の度合いを示すKAM値が減少していた。このことから高温変形中に結晶粒内部では転位組織の動的回復・再結晶が生じていることが判明した。 以上の結果から、本年度の目標である粒界部での変形挙動を明らかにし、期待通りの成果を得ることができた。また、来年度の研究計画を策定する上で、本年度の研究結果は有意義であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、結晶粒内がナノ粒子で非常に強化されているODSフェライト鋼の高温変形は粒界すべりによる変形のみで支配していると考えていたが、今回の研究で結晶粒内の変形も寄与していることがわかり、粒界部での局所変形と粒内変形を総合的に評価することが重要であることが判明した。来年度以降の研究をさらに発展させる上で、重要な知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
高温変形機構の体系的な構築を行なうことを目的とし、具体的には(1)高温強度設計式の構築、(2)これに基づくODSフェライト鋼の高強度化が挙げられる。今回の変形機構の明瞭化により、(1)では粒界変形に加えて、粒内での変形抵抗などの因子を加えることで定式化する予定である。更に(2)では粒界での変形を抑制する制御技術を確立する予定である。
|
Research Products
(11 results)