2013 Fiscal Year Annual Research Report
肺由来血管内皮細胞における低酸素応答転写因子HIF-3alphaの機能解析
Project/Area Number |
12J00314
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 里美 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 低酸素応答 / Hypoxia Inducible Factor-3alpha / 発現抑制機構 / 肺血管内皮細胞 / VE-cadherin |
Research Abstract |
本研究の目的は、肺の血内皮細胞におけるHIF-3αの機能解析を通じて負の低酸素応答制御機構の一端とその意義を解明することである。申請者は野生型(WT)マウスおよびHIF-3αノックアウト(KO)マウスのそれぞれから単離した肺由来血管内皮細胞(EC)の比較解析を通じ、これまでに肺由来血管内皮細胞においてHIF-3αはVE-cadherinを始めとする一部のHIF標的遺伝子を抑制性に制御し、肺ECの細胞増殖能および管腔形成能の維持に寄与していることを明らかにした。そのメカニズムにはAktシグナルの関与が示唆されたことに加えて、HIF-3αの破壊は標的遺伝子のプロモーター領域に対するHIF-αの結合を促進した。この結果は、正常の肺血管内皮細胞において、HIF-3αは他のHIF-αの結合を阻害することによって標的遺伝子の転写活性を抑制し、Aktシグナル活性を維持していることを示唆している。従って、当該年度では直接の原因遺伝子の特定および②標的遺伝子におけるHIF-3αの結合についてWTECを用いて検討した。 HIF-3αKO ECにVE-cadherin中和抗体を加えたところ、細胞増殖能の向上および管腔形成数の増加が見られた。これらの結果から、HIF-3αKO ECにおけるAktシグナルの低下には過剰に産生されたVE-cadherinを介したFlk1の自己リン酸化(活性化)の阻害が関与している可能性が示唆された。次に、WT ECを用いてHIF-3αのChIPアッセイを行ったところ、HIF-3αは酸素濃度非依存性にVE-cadherinの推定HIF結合領域に結合していた。以上より、HIF-3αはVE-cadherinの制御領域に結合して過剰な産生を抑えてAktシグナルを維持し、肺血管内皮細胞の機能に寄与していることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の二年目に当る当該年度では研究計画2「HIF-3αによる抑制機構の詳細な解析」を遂行する予定であったが、HIF-3α抗体を用いたChIPアッセイと血管内皮細胞を用いたプロモーターアッセイが難航した。そのため、抑制機構を詳細に明らかにするまでには至らなかった。一方、原因遺伝子については中和抗体を用いて結論を導けたと考えており、本年度の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、当該年度終了時までにHIF-3αによる抑制機構の詳細なメカニズム解明に到達する計画であったが、上記による理由から未達に終わった。しかし、HIF-3αの機能について生物学的意義との関連に注目している研究が世界的にも少数である現状を鑑みると、in vitro解析を重点的に行うことが必要であると考える。そのためにはまず、肺由来血管内皮細胞を用いたプロモーターアッセイが必須である。一般的に血管内皮細胞に遺伝子導入することは困難であるが、現在条件検討をして改善を試みている。また、HIF-3αノックアウトマウスの肺における異常な血管リモデリングとVE-cadherinの過剰な産生との関連性について免疫染色等で明らかにする予定である。
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