2013 Fiscal Year Annual Research Report
修辞のネットワーク-言語コミュニケーションの創造的領域の研究
Project/Area Number |
12J00428
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小松原 哲太 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | レトリック / 修辞的効果 / 認知意味論 / 相互行為 / 立法的逸脱件 |
Research Abstract |
研究計画で挙げた、研究目的(A)(B)(C)に関して、昨年度の研究実施状況を記述する。 (A)修辞的表現の意味を一貫した方法による詳細な記述 特に換喩現象に関する文献調査を行い、換喩の修辞的効果に関する類型を示した。また、言葉遊びの修辞現象における音韻形式のメカニズムを記述し、類音性にもとづく酒落の意味分析を行った。 (B)修辞学的分類のスキーマネットワークとしての再構築 修辞学において記述されてきた、反転修飾、転移修飾、異義兼用、異議反復、類音語接近、もじり、直喩、換喩、提喩、転喩の現象に注目し、その用例を日本文学、英米文学のテクストから収集し、観察を行った。研究の第1年度で扱った換喩に関連するレトリックの相互関係については、より詳細な認知的、言語的基盤を明らかにした。 (C)言語コミュニケーションにおける修辞的基盤の考察 昨年度の研究で最も重視して取り組んだ点は、言語コミュニケーションにおける修辞表現の機能の問題であったといえる。修辞表現を、文法研究における標準的な言語表現の逸脱性の観点から特徴づけることによって、標準的なものと逸脱的なものの差異として修辞的効果の分析を行った。 修辞現象の語用論的分析を通して明らかになってきた事実は、言語の修辞的機能は、話し手の意図を聞き手が汲み取り、また話し手は聞き手が意図を理解していることに気付いている、といったような、他者の認知に関するメタ認知のプロセスが密接に関わるということである。この他者との相互行為のプロセスは一見すると非言語的な問題に思われる部分であるが、実際には、言語の構造の中にはこの種の間主観的認知が反映されている。言語の行為的側面は、自己と他者との修辞的相互作用の分析において重要となるものと見込まれ、今後は、修辞表現の発話行為論的分析も視野に入れ、研究を進めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、2年目は、言語学において広く議論されてきた語用論の修辞的基盤を分析すること、具体的には発話行為論の修辞的分析を行うことを主眼としていたが、実際には、言葉遊びを含むより多様な修辞現象の分析を行うことができた。よって、現在本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は多種多様な修辞現象のデータを観察記述することを通して、コミュニケーションにおける言語の役割を明らかにすることを最終的な目的としている。2年目は語用論の研究と修辞の研究の相互関係を考えることによって、レトリックの語用論的機能の一端を明らかにしてきた。今後は、これまでの語用論研究で扱われていない修辞現象に関しても積極的に分析を行い、コミュニケーションにおけるレトリックの機能の包括的な研究へと進展させていく予定である。
|
Research Products
(5 results)