2012 Fiscal Year Annual Research Report
催眠による痛みに対する破局的思考への介入効果に関する研究
Project/Area Number |
12J00483
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安達 友紀 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 痛み / 破局的思考 / 催眠 |
Research Abstract |
本研究の目的は痛みに対する1破局的思考」と呼はれる要因への催眠による治療の効果を実証的に解明することである。平成24年度は,催眠による破局的思考の緩和のメカニズムを,熱刺激を用いた痛覚実験により検討した。痛みを主訴として受診している患者を対象にリクルートし,25名の研究協力者に対して実験を実施した。覚醒条件,催眠誘導条件(録音された標準催眠誘導スクリプトを用いて催眠状態に誘導のみ実施),催眠無痛条件(催眠誘導条件と同様の手続きで催眠誘導した上で無痛暗示を提示)の3条件を実施し,心理的要因に関する質問票と事象関連電位の測定を行った。結果から,痛みを強く感じる者は,痛みについて繰り返し考える傾向(反すう)と痛みの強度が無痛暗示によって減少することが示された。一方で,痛みを強く感じにくい者は催眠誘導および無痛暗示よって過度に痛みを強く受け取る傾向(拡大視)が増加することも明らかになった。催眠が痛みに対する過度に否定的な受け取り方を緩和することはこれまでも報告されてきたが,個人の痛みの感じやすさの傾向によって催眠が対象者の痛みの受け取り方にネガティブな影響をもたらすことは示されてこなかった。また,痛みに対する破局的思考の下位分類によって催眠による影響が異なることも明らかになった。これらの結果は,痛みに対する催眠療法の実施にあたって,催眠が特に有効な対象者の適正な抽出,および催眠による介入が有効な認知的要因の精緻化に貢献するものであり,大きな意義がある。質問票データに加え事象関連電位データの解析を進めることで,痛みに対する催眠の作用メカニズムのさらなる検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画に沿って実験を遂行し,催眠による痛みの緩和メカニズムの解明に貢献する知見を得られた。研究参加者数は目標を下回ったが,統計的有意差が示されたため,大きな問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
2年次目には慢性の痛みの患者を対象に介入プログラムを実施し,痛みに対する破局的思考(痛みに対する過度に否定的な受け取り方)の変化を測定する。当初は国内でのプログラム実施を計画していたが,米国University of Washingtonで実施される催眠療法の大規模介入研究においてデータを取得する許可をプロジェクトの主導者であるMark Jensen博士から得た。研究代表者は2013年8月から米国へ渡航し,データ収集を行う。
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Research Products
(5 results)