2012 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-水素結合活性化を経由したビニルモノマーの末端官能基化重合反応の開発
Project/Area Number |
12J00504
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長江 春樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 炭素水素結合活性化 / 重合反応 / 前周期遷移金属 / 二核錯体 / 希土類金属 |
Research Abstract |
本研究の目的は、前周期遷移金属錯体によるσ結合メタセシス反応を鍵反応とする末端官能基化ポリマーの新しい合成手法を開発することである。さらに、単核錯体にとどまらず、複核錯体を触媒とすることによりモノマーや末端官能基の一般性の拡大を行うことである。 本年度は、(1)希土類金属錯体を用いた炭素-水素結合活性化を鍵とする、内部アルキンとイミンからα,β-不飽和イミンを与えるカスケード反応の開発、(2)イミド架橋チタン二核ジアルキル錯体を用いたイミド配位子のオルト位の炭素-水素結合活性化と内部アルキンの挿入反応による6員環チタナサイクルの形成、などを達成した。 (1)ではイットリウム錯体によるプロパルギル位の炭素水素結合活性化によって生成するη3-アレニル錯体と、種々のN-シクロヘキシルベンジリデンイミンを反応させることで、イミンのアレニル位選択的な挿入反応とそれに続く窒素原子の求核攻撃、開環反応を経ることでイミンの炭素窒素二重結合が完全に切断され、アザ-π-アリル錯体をクエンチするとα,β-不飽和イミンが得られることから、再度イミン部分に挿入反応が進行すれば、末端に官能基を有するポリアセチレン誘導体の合成が可能になると考えられる。 (2)では架橋配位子のオルト位の炭素水素結合活性化とアルキンの挿入反応が進行することで6員環チタナサイクルが形成されることを見出しており、量子化学計算によって本反応の遷移状態では2つのイミド配位子によって架橋された2核構造が部分的に崩れることで、1つの金属に強く配位したイミド配位子のオルト位の炭素水素結合をもう片方の金属中心付近で切断する反応が進行していることがわかった。2つの金属による炭素水素結合活性化の報告例は稀であり、今後分子間での炭素水素結合活性化の検討および重合反応への展開を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
希土類金属を用いた反応では、当初ビニルモノマーの重合反応のみを検討していたが、今回のアセチレン誘導体とイミンとの反応でイミンが生成することから、ポリアセチレン合成への応用まで可能性が広がったことから当初の計画以上に進展しているといえる。また、チタン二核錯体を用いた反応では、当初の計画通り二核錯体を用いた炭素水素結合活性化を達成しただけでなく、2つの金属が協同的に作用していることを示唆する結果を得ており、今後重合反応を検討する際にも2つの金属の協同作用が発現することが大いに期待されることから当初の計画以上〓
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Strategy for Future Research Activity |
希土類金属を用いた反応開発では、(1)アルキンとイミンの触媒的カップリング反応の達成、(2)ポリアセチレン合成の検討を行う予定である。また、より反応性の高い錯体としてランタンアルキル錯体の合成を試みたが、この錯体は非常に不安定であったため、今後導入する配位子およびアルキル基をより嵩高くし錯体の安定化を図る。 チタン二核錯体を用いた反応開発では、(1)有機ポラン試薬やボレート試薬を用いることでカチオン性錯体へ誘導し、,分子間炭素水素結合活性化の検討や重合反応の検討を行う予定である。また、単離に成功した1電子還元が進行した錯体のアルキル化を行い、混合原子価錯体での重合活性とカチオン性錯体の重合活性の比較を行う。
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Research Products
(7 results)