2013 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系におけるトポロジーと量子輸送現象の理論的研究
Project/Area Number |
12J00600
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下出 敦夫 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 熱磁化 / 熱伝導度 / 熱分極 / 重力理論 |
Research Abstract |
ゲージ理論の観点から熱応答を整理し, 曲がった時空におけるKeldysh形式を用いた定式化を確立した. 電磁気学によると, 電荷・電流はそれぞれスカラー・ベクトルポテンシャルと結合し, その帰結として電場は電気分極と, 磁場は軌道磁化と結合する. また電場によって誘起される電流から電気伝導度が定義される. 一方熱が重力ポテンシャルと結合することから, 重力場によって熱伝導度が定義されることがLuttingerによって指摘されていた. 重力のゲージ理論であるCartan形式では, 重力ポテンシャルは多脚場の時間成分で記述される「スカラーポテンシャル」である. そこで多脚場の空間成分が熱流と結合する「ベクトルポテンシャル」であると期待でき, 逆に熱流は時間微分と速度の積で定義されなければならない. さらに「ベクトルポテンシャル」から涙れ磁場が自然に誘導され, 熱磁化を定義しKeldysh形式を用いて計算することができる. 熱Hall伝導度は久保公式と熱磁化からなることが知られているので, 熱磁化の厳密な定義は重要な意味をもつ. 既に昨年度捩れ電場を用いて久保公式を得ており, 合わせて熱伝導度の完全な定式化を確立した. 特に量子Hall絶縁体・超伝導体では熱Hall伝導度が量子化することが知られているが, この現象が多脚場のChern-Simons項で記述されることを明らかにした. 熱と電磁気の対応関係を完全なものにするため, さらに熱分極の定式化を試みた. トポロジカル絶縁体・超伝導体において熱分極が回転によって誘起されるという指摘もあり, その微視的理解への第一歩としても熱分極の定式化は重要である. さて電気分極は断熱変形によって誘起される電流を時間積分して得られることが知られている. そこで熱流を時間積分し, さらに熱分極特有の補正項を見出したことで, 熱分極の定式化を確立した. 電気分極と異なり熱分極が自発的に現れることはないが, トポロジカル絶縁体・超伝導体においては回転ではなく捩れ磁場によって誘起されることを指摘した. この交差相関応答はNieh-Yan項と呼ばれる捩率のトポロジカル項で記述される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱応答のゲージ構造を確立し, 磁化と伝導度, 分極に関する一般的な定式化を与え, 論文を発表することができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
強磁性金属における異常(熱)Hall効果に対する(非)弾性散乱の効果や, 角運動量などの運動量輸送について調べる.
|