2012 Fiscal Year Annual Research Report
菌従属栄養植物における生態適応:絶対菌寄生性の獲得と特異な送粉様式の進化
Project/Area Number |
12J00602
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
末次 健司 京都大学, 地球環境学堂, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 菌根共生 / 受粉生態 / 菌従属栄養植物 |
Research Abstract |
菌根共生系に関する課題として、ヒナノシャクジョウ属のシロシャクジョウ、ヒナノシャクジョウについて、採取根をトリパンプルーで染色し,菌根形態を観察するとともに、根抽出DNAに対して菌特異的プライマーを用いて菌根菌の分子同定を行なった。その結果、両者の菌根菌は、アーバスキュラー菌根菌の一群であるGlomus group Abに属していることが明らかになった。Glomus group Abが最も多くのバイオバスを占めるアーバスキュラー菌根菌であることを考えると、それへの特殊化は、より多くの炭素源を奪うための適応であるかもしれない。両者の利用する菌には、ある程度の特殊化が認められたが、少なくともヒナノシャクジョウでは複数の系統に属する菌を利用していた。さらにヒナノシャクジョウとシロシャクジョウは、菌根菌の一部を共有していることが明らかになった。これまで菌従属栄養植物は、近縁種間でも、それぞれ異なる菌と共生しているという、その高い菌根菌に対する種特異性に注目が集められてきたが、菌従属栄養植物の宿主範囲や宿主利用のパターンは一概に一般化できるものではない可能性が高いと考えられる。 受粉様式に関する課題としては、ツチアケビの送粉様式の調査を行った。花形態から考えると、ハナバチによって送粉されると考えられるツチアケビであるが、専ら自動自家受粉によって結実していることが明らかとなった。菌従属栄養性の植物は、菌寄生性の獲得により、他の競争相手となる植物の少ない暗い林床への進出を可能としたが、そのような環境は多くの送粉者にとっては不適な環境である。自動自家受粉の進化は、薄暗い林床で確実に繁殖を成し遂げるための適応のひとつであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外観察から分子生物学的手法に至る様々な手法を駆使し、菌従属栄養植物の宿主や送粉様式の解明を行なった。成果の一部は、国際的な学会誌への掲載済み、あるいは、決定しており、陸上植物の進化における最も謎に満ちた現象である菌寄生性の起源に多様な視点から迫まるという当初の目的通り、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き1年目の調査を補完するため、菌従属栄養植物の送粉様式、菌根菌の同定を行なう。特に、近縁種間で無葉緑のものから緑葉を持つものまでを含むグループに着目し、それらの間で、送粉様式、共生菌の種構成、植物の光合成能に関するデータを取得する。また得られた結果は、随時、国際的な学会誌に投稿する。
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Research Products
(4 results)