2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造制御薄膜による血管網の構造制御と選択的回収法の創製
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12J00622
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西口 昭広 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 再生医療 / 組織モデル / 高分子薄膜 / 血管 / 腫瘍 |
Research Abstract |
特別研究員に採用され1年目となる本年度においては、主に血管網構造体の構築とその制御に重点をおいて研究活動を行った。まず生体外での生体類似組織の構築技術の発展は、再生医療のみならず創薬産業においても重要であり、申請者らは、細胞集積法によって短期間で積層組織を構築し、また緻密かつ広範囲に広がった血管網を有した組織の構築にも成功している。血管網を有する生体類似組織の構築において、血管網の構造制御(密度、太さ、配向性)、血管網の回収、正常・疾患組織との複合化の三点が重要であるが、これらを満す手法は報告例がない。このような背景のもと、まずは血管網構築時の実験条件に関して改善を行った。その結果、血管網構築においては、使用する線維芽細胞からなる組織の厚みによって血管網構造が形成されるかどうかが決まることが示された。これは血管内皮細胞の培養環境が重要であるためであり、低酸素状態・周辺組織からの液性因子・三次元的な微小環境が重要であることが見出された。これらの研究成果をまとめ、現在論文を執筆中である。また血管網組織の正常および疾患組織との複合化に関しては、構築した血管網を含む組織と膵臓癌および大腸癌由来の細胞を同時に培養することで、腫瘍浸潤モデルに構築に取り組んでいる。生体外で作製した膵臓癌および大腸癌の組織モデルの血管網の挙動を、マウス実験(生体内実験)の結果と比較したところ、非常に類似した結果が得られた。これらの結果から、本組織モデルは様々ながん細胞に適用可能であり、目的の癌細胞を用いて生体内と同様の挙動を示すような組織モデルが生体外で構築できる可能性が示された。本実験結果は、第33回日本バイオマテリアル学会大会およびアメリカのバイオマテリアル学会(SFB 2013 annual meeting)において発表を行っており学生賞を受賞している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、三次元組織における血管網構造の制御とそれらの選択的回収に焦点を置いているが、現在のところ、構造制御に関してはおおむね順調に進展しており、さまざまな知見が得られている一方で、血管網の回収に関しては細胞表面に形成する薄膜形成条件の最適化にとどまっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的としていた三次元組織のおける血管網の構造制御に関しては従来通り、薄膜の成分や組合せ、および添加因子、フロー培養などを組み合わせることでより一層進展するものと思われる。構造制御した血管網構造は他の細胞、たとえば腫瘍組織と複合するなど様々な応用展開を考えている。一方血管網の選択的回収法の創製に関しては薄膜成分の選定および付与する刺激の選定を行う必要があるもとと考えられる。
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Research Products
(9 results)