2012 Fiscal Year Annual Research Report
多文化社会における「共生」のための教育に関する研究--南アフリカ共和国に着目して
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12J00766
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂口 真康 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 共生社会 / 共生教育 / 南アフリカ共和国 / アパルトヘイト / Life Orientation / フィールド・ワーク |
Research Abstract |
本研究の目的は、南アフリカ共和国(以下、南ア)における「共生」のための教育について分析することにより、既存の「共生社会論」および「共生教育論」への理論的なフィードバックを図ることである。 本目的を達成するために、平成24年度に実施した研究においては、1、既存の「共生」概念を巡る議論の検討、2、アパルトヘイト崩壊後に南アで試行されてきた「共生」のための取り組みについての分析、3、南アの高等学校を事例とした「共生」のための教育実践の分析、という3つの課題に取り組んだ。課題1と課題2については先行研究や政府文書を用いた文献研究等を行い、課題3については平成24年7月から8月にかけて南ア西ケープ州の高等学校3校にてフィールド・ワークを行った。課題1については、「共生」は必ずしも調和的な社会を指し示した概念ではなく、対立を抱えながらも社会における多様性をいかに収束していくのかを問いかける概念でもあるという点を描き出したことが意義として挙げられる。課題2については、現在の南アにおける「共生」のための取り組みとして高等学校で実施されているLife Orientationという科目に注目した上で、そこでは理想的な社会像のみではなく、現実社会を生きることの厳しさや現実社会で他者と生きるためのスキル等の学習が行われているという点を描き出したことが意義として挙げられる。課題3の南アにおけるフィールド・ワークについては、教育者17名と学習者63名を対象としたインタヴュー調査ならびにLife Orientationの授業を中心とした18の授業観察を実施した。南アにおける「共生」概念を考察する上で、Life Orientationという科目に焦点を当てて、これまでほとんど取り上げられてこなかった実際に授業を教え/受けている人々の声を拾い上げた点に、平成24年度に実施したフィールド・ワークの重要性と意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的を達成するために核となる課題3(南アフリカ共和国の高等学校を事例とした「共生」のための教育実践の分析)に取り組むために、平成24年7月から8月にかけて西ケープ州の高等学校3校にて教育者と学習者を対象としたインタヴュー調査ならびに授業観察を順調に実施することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成24年度に実施した文献研究、インタヴュー調査ならびに授業観察の分析結果をもとにして、南アの高等学校に通う学習者を対象とした質問紙調査票を完成させ、平成25年7月から8月にかけて南アラリカ共和国西ケープ州の高等学校3校にて、実際に調査を実施することが中心的な課題となる(実査が順調に進んだ場合は、そこで得られたデータの分析も同時に課題となる)。
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Research Products
(2 results)