Research Abstract |
1年目の研究計画として掲げた,データ解析手法の開発,先行研究のレビュー,古人骨試料の分析は,いずれも順調に進んでいる,本年度はここに霊長類への応用が加わったため,成果の論文化に割く時間的リソースが低下した.しかし現在,結果の出ている研究に関しては,国際誌への投稿準備を最優先で進めている. 本年度に実施した研究は以下の通りである, (A)考古学試料の同位体分析 江戸時代の4つの遺跡(一橋高校,堺環濠都市,池之端七軒町,雲晴寺)について,骨試料をサンプリングし,同位体分析を進めている.このうち,雲晴寺の研究に関しては,共同研究者による形態学的な分析とあわせて,共同研究者を筆頭著者として成果が論文化された. (B)霊長類への応用 霊長類の授乳習慣についての同位体生態学的な基礎的知見を得るため,食性や母子接触の観察や試料サンプリングが容易な動物園のチンパンジーを対象に,毛・糞・食物の同位体分析を行なった. (C)離乳による同位体比変化のモデル化 これまで断片的にしか報告されていなかった小児骨コラーゲンの置換速度を新たに推定し.これを組み込んで,窒素同位体比の変化を客観的・定量的に解析できるモデルを開発した.モデルはR言語のパッケージとして配布した. (D)これまでに行なった研究の論文化 有珠モシリ遺跡(北海道,続縄文文化),モヨロ貝塚(北海道,オホーツク文化)より出土した小児骨の同位体分析の結果を,現在,論文化している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初予定していた考古学試料への同位体分析の応用のほかに,現生霊長類での基礎的実験が加わった.そのため,データの獲得は計画以上に進んだが,反対に成果の論文化は滞ったためである.データ解析手法の開発は,当初の計画通りに進んだ.
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