2013 Fiscal Year Annual Research Report
余剰次元におけるクォーク・レプトンの世代構造の研究
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12J00801
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 亮 島根大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ無し二重β崩壊 / 宇宙マイクロ波背景幅射 |
Research Abstract |
宇宙マイクロ波背景輻射観測衛星"Planck"は、2013年3月に、その最初の観測結果を報告した。私は受入研究者と共にその報告におけるニュートリノの質量の和に対する新たな制限(上限)に着目した。この上限とこれまでにニュートリノ振動実験から測られているニュートリノの質量二乗差の値を組み合わせることにより、3世代あるニュートリノの質量固有値の縮退度にも新たな制限を付けることが可能となる。そして、ニュートリノ質量の縮退度に対する制限は、レプトンセクターの世代構造を説明する模型を構築する際に、必ず満足していなければならない制限の一つとなる。我々はこの考察を行い、その結果として、ニュートリノの質量スペクトルがNormal Hierarchyの場合には、95%C.L.で85%以上の縮退度は棄却されることを明らかにした。同様にして、質量スペクトルがlnverted Hierarchyの場合には、82.5%以上の縮退度が棄却されることを明らかにした。更に、Planck衛星等から制限が課されるニュートリノ質量の和とニュートリノ無し二重β崩壊実験から制限が課される有効質量を同時に考察することにより、ニュートリノ質量スペクトルを判別できる領域が存在することを指摘した。本研究で我々が示したニュートリノ質量の縮退度への制限と将来の実験・観測からその決定が期待される質量スペクトルのパターンは、レプトンの世代構造を説明する模型の構築とも密接に関係する重要な部分である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末に宇宙マイクロ波背景輻射観測衛星"Planck"から報告されたニュートリノ質量の和に対する新たな制限を受け、世代構造模型が満たすべきニュートリノ質量スペクトルに対する制限を数値解析により得ることができた。更に、この制限とニュートリノ無し二重β崩壊実験からの制限を組み合わせることによりニュートリノ質量スペクトルを決定できる領域を明示することに成功した。余剰次元模型の実現可能性については、これらの領域を満たすべきであるので、最新の実験結果を解析に反映させることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
LHCでの実験、LFV実験に加え、宇宙マイクロ波背景輻射観測からも重要な実験結果が得られてきた。更に、ヒッグス粒子の発見やその質量の決定、トップクォーク質量測定精度の向上により、素粒子標準模型及びニュートリノセクターの物理量が更に精密に決定されてきた。そして、これらの量に対する繰り込み群方程式を解くことにより、余剰次元が存在し得るTeV領域以上の値も精密に決定できるようになっている。従って. これらの最新の実験結果, 高エネルギー領域における値を正確に把握・評価し、模型の改善、再解析、実現可能性の検討に網羅的に取り組んでいく。
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Research Products
(10 results)