2012 Fiscal Year Annual Research Report
植物の「立ち聞き」における匂い受容と間接防衛活性化の分子機構
Project/Area Number |
12J00841
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 貢一 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 植物間情報伝達 / 植物-植食者相互作用 / 誘導防衛 / 揮発性化合物 / 配糖体化 / トマト / ハスモンヨトウ |
Research Abstract |
申請者らは、未食害トマトが食害トマトから放散される(Z)-3-ヘキセノールを取り込み、配糖体化することで有効な防衛を行っていることを提唱している。本年度の研究成果では(Z)-3-ヘキセノールを配糖体化する酵素の候補遺伝子を得ることができた。今後、候補遺伝子の中から(Z)-3-ヘキセノール配糖体化遺伝子を同定することで、植物による(Z)-3-ヘキセノール受容メカニズムの一端を明らかにできる。また当該遺伝子の変異体を選抜することで、揮発性化合物に曝露された植物が行う誘導防衛に配糖体化がどの程度貢献しているのかを調査することが可能となる。 〈外来(Z)-3-ヘキセノール配糖体化酵素遺伝子の同定〉 多種の植物に(Z)-3-ヘキセノールを曝露し、その植物に蓄積した配糖体化合物を分析したところ、ほぼすべての植物が(Z)-3-ヘキセノール配糖体を蓄積した。この結果は、(Z)-3-ヘキセノールの配糖体化が植物一般にみられる戦略であることを示唆している。 酵素遺伝子の同定やノックダウン植物の作製が比較的容易であるシロイヌナズナの葉を用いて酵素活性測定法を検討したところ、(Z)-3-ヘキセノールとUDP-グルコースを用いることで配糖体化の第一ステップ酵素反応を測定することができた。 上記にあるように、様々な植物種による配糖体化を検討した際に配糖体可能の異なるトマト近縁種を見出した。 この結果を受けて、トマトとその近縁種の交配植物の中から(Z)-3-ヘキセノールを曝露しても配糖体を蓄積しないトマトを選抜した。当該植物の遺伝学的な解析から、第二段階目の配糖体化酵素の候補遺伝子を4つの候補遺伝子に絞り込むことに成功した。4つの候補遺伝子の配列は非常に似ていたため、現在は各遺伝子をクローニングし、組み換え酵素を用いた生化学的な方法で機能同定を目指している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画では、シロイヌナズナを用いて(Z)-3-ヘキセノール配糖体化活性を測定するための酵素反応条件を検討することを第一の目的としていた。実際に、シロイヌナズナの粗酵素液を用いて配糖体化活性を測定することに成功した。加えて、原種トマトを用いた遺伝学的解析から、配糖体生合成に関与する染色体領域を推定することに成功し、配糖体化酵素の候補遺伝子を得ることができた。これは、研究計画から大きく前進した点である。また、(Z)-3-ヘキセノール曝露植物からの(Z)-3-ヘキセノール再放散を解析する計画は、実験システムの構築が完了したところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
遺伝学的解析から(Z)-3-ヘキセノール配糖体化酵素の候補遺伝子が得られたため、組み換え酵素タンパク質や逆遺伝学的手法を用いて遺伝子の同定をいち早く進めることを目指す。特に、逆遺伝学的な解析では植物がなぜ(Z)-3-ヘキセノールを配糖体化するのかを推測するための情報につながるため、遺伝子機能同定後の変異体作製などに注力する。また、シロイヌナズナを食害する植食者集団が現われるのが春と秋の2シーズンのみであるので、手早く昆虫の行動実験を行うようにする。
|
Research Products
(6 results)