Research Abstract |
本研究は,イオン液体(IL)を媒体とし,高分子の熱分解温度以下での高結晶性無機物の合成とそれを利用した有機/無機複合粒子の合成を目指している。本年度は,1.ILを媒体としたゾルーゲル反応における高結晶無機物の生成機構の解明,及び2.IL中でのゾルーゲル反応による有機/無機複合粒子の合成とその応用について検討を行った。1.については,IL中にて低温で高結晶性無機物が得られる原因として考えられているILの局所構造との関係性を調べるため,ILのカチオン種,アルキル鎖長,IL濃度を変化させ,ゾルーゲル生成物の結晶性について詳細に検討を行った。その結果,局所構造の形成において重要であると考えられているπ一πスタッキングの影響が強く現れるイミダゾリウム系IL中において高結晶性の生成物が得られた。また,ILのアルキル鎖長が長く,IL濃度が低いほど得られる生成物は高結晶性であった。これらのことは,ILが無機物の結晶成長を促進する効果をもつことを支持する結果であり,ILの新規な機能を見出した非常に重要な結果である。 2.については,ポリスチレン粒子存在下,IL中でのゾルーゲル反応による有機/無機複合粒子の合成について検討を行った。その際,反応温度や前駆体の添加方法などのパラメータを変化させ,複合粒子のシェル形成に及ぼす影響について検討を行った。その結果,IL中でのシェル形成機構は速度論的支配に対して,各成分間の界面自由エネルギーに基づく熱力学的支配の影響が大きいことを明らかにした。また,得られた粒子をフィルム状に成形加工し熱伝導率測定を行った結果,ポリスチレン単独に比べ熱伝導率の向上が確認された。この結果について,コアシェル構造に基づく無機物の連続熱伝導構造体が重要であることをシミュレーションから明らかとした。
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