2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01044
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西村 和帆 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞死 / 細胞老化 / ストレス応答 / 運命決定 / 核小体 / p53 |
Research Abstract |
私達は様々な外的ストレスに晒されている。紫外線や化学物質は言うに及ばず、過栄養、栄養飢餓なども人体にとってストレスの要因となる。これらのストレスは、細胞の老化や癌化を引き起こすことによって種々の疾患の原因となる。私は、ストレスがどのように細胞内で感知・統合され、細胞の運命を決定していくのかということに興味を持ち、『核小体』という核内構造体に注目した。核小体は、リボソーム合成の場として知られており、リボソームDNAから未成熟なリボソームRNAを転写し、それをプロセシングすることにより成熟したrRNAを合成している。核小体は膜構造を持たず、rRNAの転写量とそれをプロセシングする速度によって、サイズが決まっている。 昨年度までの研究から、私は、「栄養飢餓や紫外線、化学物質などのストレスが、rRNAの転写を阻害し、核小体サイズを『縮小』させること」、一方、「癌遺伝子の活性化(癌化ストレス)や細胞分裂によるエラーの蓄積(複製ストレス)は核小体サイズを『肥大化』させること」を明らかにした。また、核小体縮小時と肥大化時では癌抑制因子p53の活性化状態に違いがあることを明らかにしている。そこで、本年度は、ストレスと核小体、および細胞の運命決定の統合的理解を目的として研究を進めた。 その結果、「核小体が縮小するストレス時には、核小体内に存在するMYBBP1Aという蛋白質が核質へと移行し、p53をアセチル化することで強く活性化させ、『細胞死』を誘導すること」、一方で、「核小体が肥大化するストレス時には、リボソームを構成するRPL11という蛋白質がp53の分解を抑制して弱く活性化させ『細胞老化』を誘導すること」を明らかにした。 以上から、核小体は様々なストレスを感知・統合し、ストレスの種類によって自身のサイズを変え、細胞の運命を決定していることが明らかになった(J. Cell Biol. 投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、本年度は、紫外線や癌化ストレスなどの生理的なストレス下において、リボソーム生合成の阻害がp53の活性化制御を介して、細胞の運命を決定していることを示すことが出来た。さらに、核小体がストレスに応答して細胞死や細胞老化を選択する分子メカニズムについて結果を取りまとめ、現在論文を投稿しており、おおむね計画通りに研究を進めることが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、3年目に計画していた「生理的なストレス下における核小体のストレスセンサーとしての機能」を2年目に明らかにし、論文を投稿することが出来たので、今後は論文のリバイス実験と並行して、研究を応用に繋げていきたいと考えている。最近の報告では、体内に老化細胞が蓄積すると、背骨の湾曲などの加齢性疾患や糖尿病、癌を引き起こすことが明らかになっている。上記結果を応用すれば、細胞の運命を老化から細胞死に切り替えることで、体内から老化細胞を除去し、加齢性疾患や癌をはじめとした種々の疾患を予防・治療できる可能性がある。今後は、老化細胞特異的な細胞死誘導剤を探索・合成し、その効果を検討することを計画している
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