2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01200
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 綾香 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レオロジー / セルロース / 多糖 / セグメントサイズ / 複屈折 / 水素結合 / 応力光学則 |
Research Abstract |
セルロースをはじめとする多くの多糖高分子は、溶液中でその高次構造や分子間/分子内相互作用が特異的な性質を発現させている。したがって、このような構造および相互作用の詳細を解明することが多糖分子物性において重要であり、多糖の特異性を活かした新規材料としての応用研究にもつながる。多糖の中でもセルロースは構造的に最も単純であり、他の構造性多糖分子の溶液特性を解明する上でも重要な端緒となることが見込まれる。これまでの研究により、セルロースの溶液特性においては、分子間および分子内に形成される水素結合による会合が重要な因子であるととが示唆されている。そこで本研究では、まず、動的粘弾性と複屈折の同時測定を行い、(1)分子間水素結合により影響を受ける分子鎖ダイナミクスと、(2)分子内水素結合により影響を受ける分子鎖の屈曲性について検討する。さらに、このような因子は、セルロースの生物学的由来および溶媒や温度によっても影響を受けるため、これらの因子について系統立てて検討すれば、セルロース溶解機構についても言及できる。 我々はすでに上述の測定によって得られる応力光学係数(複屈折と応力の比;セグメントのサイズや屈曲性を反映)の値から、水酸基を置換し水素結合による会合を抑制したセルロース誘導体について粘弾性セグメントサイズを決定し、セルロース分子鎖の屈曲性の指標を得ることに成功している。これに照らし合わせ、今年度はイオン液体を溶媒としたセルロース溶液について応力光学係数およびセグメントサイズを決定し、セルロースの溶液中での動的剛直性についての指標を得た。その結果、イオン液体中ではセルロースは比較的屈曲的で、これまでに報告されている最小のセグメントサイズとほぼ同等の値であった。これはセルロースの分子間水素結合をイオン液体がよく切ることができるという可能性を示している。また、上記のような手法および解析をアミロースおよびプルランにも適応し、それぞれについてセグメントサイズを得ることに成功した。セグメントサイズは濃度依存性を持ち、ある濃度域まではそれぞれの多糖でその値に大きな差は見られないが、濃厚になるほどそれぞれの固有値を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記した主な今年度の目標は、イオン液体中セルロース、アミロースおよびプルランの溶解状態を粘弾性および流動複屈折の測定により得られるセグメントサイズで議論することであった。この目標は達成し、論文投稿は完了していないが、国内外のいくつかの学会で成果を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果により、セルロースをはじめとするいくつかの多糖について流動光学的手法によりセグメントサイズや溶解状態を議論できることが明らかとなり、多糖の分子特性が濃厚溶液のセグメントサイズに現れることが示唆された。したがって、今後はセルロースと同様βグルカンであるカードランやキチン等のさらに他の多糖について同様の議論を進め、多糖の分子特性について包括的な研究を進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)