2012 Fiscal Year Annual Research Report
白血病幹細胞のNotchを中心とした分子病態の解明とその検査法、標的治療法の開発
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12J01270
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
奥橋 佑基 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 白血病 / 臨床血液学 / シグナル伝達系 / siRNA |
Research Abstract |
本研究では、白血病の分化、増殖に関与しているNotch、Wnt、Hedgehog関連遺伝子の発現がそれぞれのシグナル伝達系へ与える作用および白血病幹細胞の分化、増殖に与える効果を検討し、シグナル伝達系の分子機序を解明することを目的としている。 今年度は白血病細胞におけるNotchシグナルとmTORシグナルの相互作用について学会で報告した。現在、Notch関連遺伝子のsiRNAを用いて、白血病細胞の分化、増殖の効果、タンパクおよび遺伝子発現量の変化を解析中である。 24年度に行った研究結果の概要を以下に示す。 1.白血病細胞株に対してNotchリガンド刺激を行い、Notchシグナルを活性化させたときの他のシグナル伝達系ヘタンパクの変化をイムノブロット法で、種々の遺伝子の発現量の変化を定量RT-PCR法で解析した。その結果、Notchリガンド反応性の白血病細胞株において、Notchシグナル活性化がmTORシグナル系の蛋白と遺伝子を活性化させることが確認された。このことからNotchシグナルとmTORシグナルは相互的に作用している可能性を見出した。白血病細胞でNotchリガンド刺激によるNotchシグナル活性化がmTORシグナルへ及ぼす効果を解析したのは本研究が世界初である。 2.白血病細胞に対し、Notch関連遺伝子のsiRNAをエレクトロボレーション法によって細胞に導入し、Notchシグナルに特異的な遺伝子の発現を抑制後、白血病細胞の分化、増殖に対する効果を評価し、他のシグナル伝達系への作用を解析した。エレクトロボレーション法によるノックダウン効果は、遺伝子発現では7割以上の減少、イムノブロット法ではバンドがほぼ消失するまでのノックダウンが得られ、導入1週間後でも遺伝子発現の減少が確認できた。また、一部の白血病細胞においてNOTCH1遺伝子のノックダウンによってmTORシグナル系の蛋白と遺伝子の発現が抑制されることを確認した。この結果と、結果1で見出した結果から、白血病細胞におけるNotchシグナルとmTORシグナルの相互作用の存在がより明らかになったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究における方法論や手技は既に習得済みである。また、本研究から新しい知見も得られており、当初の計画に沿って順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Wnt、Hedgehog関連遺伝子のsiRNAを細胞に導入して、これらのシグナルを阻害することによる白血病幹細胞への効果を調べる。また、siRNAによる作用が患者細胞にも当てはまるかを調べるため、同意を得た白血病患者の血液残余検体から分離した白血病細胞を用いて、同様の検討を行う。 以上の結果から、Notch、Wnt、Hedgehogシグナルが各症例の白血病幹細胞にどう関与しているかを総括する。また、上記で行った解析法のうち、どのようなことを検査として行えば、この関与が簡便にわかるかを検討する。さらに、現在までに得られている各シグナル阻害剤の効果に関する結果が、siRNAによるシグナル阻害の結果と一致するかを解析し、シグナル阻害剤の作用がそのシグナルに特異的なものであるかを検討する。特異性が高いことがわかれば、将来、そのシグナル阻害剤が分子標的治療薬となりうる可能性があり、阻害剤が有効となりうる症例を選別できる検査法を上記の解析方法を元に検討する。
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Research Products
(7 results)