2012 Fiscal Year Annual Research Report
特異な分子吸着能を示す可動型配位錯体の合理的設計指針の構築
Project/Area Number |
12J01280
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沼口 遼平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多孔性配位高分子 / 吸着誘起構造転移 / 分子シミュレーション / 自由エネルギー解析 / 吸着ポテンシャル理論 |
Research Abstract |
本年度は,研究計画中では25年度に実施予定であった多孔体の変形を伴う吸着現象,すなわちゲート吸着の温度依存性予測モデルの構築に取り組んだ。近年,多孔体の変形を伴わない通常の物理吸着現象の予測手法である吸着ポテンシャル理論が,メカニズムの異なるゲート吸着現象にも適用可能なことが報告されている。この一見奇妙な事実に理論的なバックグラウンドを与えるため,熱力学的平衡に基づくモデル式を導出し,その妥当性を分子シミュレーションを用いて検証することで,本手法をゲート吸着挙動の予測手法として確立することを目指した。 多孔体と気体分子からなる系が吸着誘起構造転移平衡にあるとき,構造転移前後の系の自由エネルギーがバランスする。この関係式を出発点とし,細孔内流体の状態を「細孔ポテンシャル場から均一な相互作用を受けているバルクの飽和液体」として表現する,吸着ポテンシャル理論の近似手法を用いることで,ゲート吸着に対する吸着ポテンシャル理論のモデル式を得た。吸着ポテンシャル理論は,「気体を吸着状態へと圧縮する仕事二吸着ポテンシャル場の相互作用」という関係で表されるが,本モデルでは,「気体を吸着状態へと圧縮する仕事=吸着ポテンシャル場の相互作用-多孔体の変形エネルギー」という,ゲート吸着特有の項が一つ加わった関係式となった。このモデル式の妥当性を検証すべく,単純な構造を持つ可動型多孔体モデルに対する分子シミュレーション結果を用いて,吸着ポテンシャル理論の特性曲線を計算するとともに,モデルによる理論値を特性曲線の立ち上がり位置と比較した。その結果両者はよい一致を示し,モデルが妥当であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に着手予定であった,多孔性配位高分子CPL-p1のAtomisticモデルを用いた検討については,画期的な進展を認めるには至らなかった。しかし,次年度に達成予定であった温度依存性予測モデルの構築については,これまで理論的背景が明らかでなかった吸着ポテンシャル理論による予測手法のメカニズムを解明することに成功し,工学的意義の高い成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は大きく分けて,実在系の吸着誘起構造転移挙動を再現可能なAtomistic構造モデルの構築と,そのゲート吸着挙動を予測するモデル構築及び検証が達成すべき課題となる。順序が前後し,後者の成果が先に得られるような進捗となっているが、今後は、24年度着手予定であったAtomisticモデルを用いた検討を進め,予測モデルを実在実験系で利用していくための基礎を確立する予定である。
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Research Products
(4 results)