2013 Fiscal Year Annual Research Report
特異な分子吸着能を示す可動型配位錯体の合理的設計指針の構築
Project/Area Number |
12J01280
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沼口 遼平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多孔性配位高分子 / 吸着誘起構造転移 / 分子シミュレーション / 自由エネルギー解析 / 吸着ポテンシャル理論 |
Research Abstract |
本研究は吸着誘起構造転移(ゲート吸着)現象を示す柔らかな多孔性配位錯体(PCP)の合理的設計指針を構築するため, PCP合成前に入手可能な情報のみからのゲート吸着挙動予測を目的とし, 研究を進めてきた。そのために, 今年度は実在のPCPであるCPL-p1を緻密に模したAtomisticモデルの構築とその分子シミュレーションを実施し, 本系に1咋年度提案したゲート吸着挙動の温度依存性予測モデルを適用することで, この予測モデルの妥当性を検証した。CPL-p1のアルゴン包摂構造を, 初期値として含溶媒構造や溶媒脱離後の構造データを利用しつつ決定し, 温度, 圧力PCP構造の変化に伴う自由エネルギー変化の計算を行ってゲート吸着挙動を決定したところ, 実験結果をよい精度で再現可能なことが確認できた。また, 前述の予測モデルを用いてゲート吸着挙動の温度依存性を計算し, これを分子シミュレーションによる計算値と比較したところ, 本モデルがシミュレーション(=理想的実験系)の結果を十分な精度で予測可能なことが確認できた。 以上の内容のうち, ゲスト分子包摂構造の推定に, PCP合成後に実験によって得た溶媒包摂構造等を用いた点は, 当初の研究目的に照らすと不十分な点であった。これは, 有機-無機ハイブリッド材料であるPCP内の結合距離や角度の振動を適切に表現できる分子力場パッケージがいまだ確立されていなかったため, 実験データを参照せずMolecular Mechanics法などを用いて構造を決定するのが困難だったことに起因する。PCPに適した力場パッケージの開発は様々なグループにより現在も続けられており, 将来的にはこの困難も解決されるものと見込まれる。以上のことから, 本研究における取組みによって, 吸着誘起構造転移を示す柔らかいPCPを合理的に設計するための重要な指針を得るという目標は, 一部課題を残してはいるものの, 十分に達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(8 results)