2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体を「鋳型」とする生体内機能性分子の鋳型有機合成と展開
Project/Area Number |
12J01286
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩田 隆幸 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鋳型誘起合成 / 翻訳後修飾 / 2−アミノイミダゾール / アルギニン / 共役アルデヒド / 共役イミン / アゲラジンA |
Research Abstract |
報告者はこれまでに、生体内分子相互作用を選択的に制御する万法として、鋳型となるタンパク質に相互作用する分子構造を鋳型から有機合成化学的に写し取る「鋳型誘起合成」を開発し、細胞内シグナル伝達に関わるタンパク質・タンパク質相互作用を選択的に阻害するペプチド分子の創製に成功している。本研究課題では、本法を組織上、あるいは動物内においても汎用的に利用できる方法とすることを大きな目的としており、昨年度においては生体分子混在系でも利用できる新たな結合形成反応の開発を行った結果、アルギニン側鎖のグアニジンおよびアリールグアニジンに対して、共役アルデヒドを作用させることで温和な条件下で2―アミノイミダゾール誘導体を合成できることを見出した。また、この反応系内に様々なアミンや置換アルデヒドを続けて作用することにより、最初に得られる2―アミノイミダゾール誘導体に対して様々な官能基変換や構造変換を達成した。そこで、今年度ではこの2―アミノイミダゾール合成法を用いてアルギニン側鎖のグアニジン官能基に対して顕著な血管新生阻害活性をもっ天然物であるアゲラジンの導入を試みた。その結果、保護アルギニンに対して、フマルジアルデヒドを作用させ、2一アミノイミダゾール環を構築後、ワンポットにて塩化アンモニウム、ピリジンアルデヒドを作用させたところ天然物構造の導入に成功した。アゲラジンはMMP (Matrix Metalloprotease)の阻害により血管新生阻害を示すことから、今後はMMPを鋳型とする鋳型誘起合成を実施することで、MMPをより効率的に阻害するアゲラジン−タンパク質複合体を見出すことができると期待できる。一方で、ジニトロフェニルグアニジンに対して、アルギニンと同様のワンポット反応を行い、最後にチオリシスによって、アリール基を除去することによって天然物であるアゲラジンAの全合成にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、昨年度見出した新たな結合形成反応である2―アミノイミダゾール合成法を用いて、アルギニン側鎖上に天然物構造を導入することに成功した。今後は、ペプチドやタンパク質のアルギニン側鎖に導入した天然物構造に鋳型を認識させることで、MMPを鋳型とした鋳型誘起合成が行えることが期待できる。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに報告者が見いだした共役イミン化合物の新奇な[4+4]反応を活用して、生成するジアザビシクロオクタン誘導体をリン酸基や各種金属の配位構造として利用する方法も検討する、さらにペプチドおよびタンパク質中のアルギニン側鎖上に天然物構造を導入することで、MMPを鋳型とした鋳型誘起合成を実施する。
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Research Products
(4 results)