2012 Fiscal Year Annual Research Report
アンサンブルカルマンフィルタ等データ同化手法の基礎的及び応用的研究
Project/Area Number |
12J01335
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近藤 圭一 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | データ同化 / アンサンブルカルマンフィルタ / LETKF / NICAM / マルチスケール / 数値予報 |
Research Abstract |
本研究は、大気の流れを考慮したアンサンブルデータ同化手法を高解像度大気モデルに適用することにより、誤差の小さく精度のよい初期値を作成し、さらなる予測精度向上を目的とするものである。初期値の改善及び予測精度向上により、大気のメカニズムの理解の深化や、事前に災害の規模や影響範囲を推定等が可能になるものと考えられる。 当該年度においては、雲解像も可能である大気モデルNICAMにアンサンブルデータ同化手法の一つであるLETKFを適用したNICAM-LETKFを用いて、共分散膨張係数及び観測誤差の動的推定を実装し、モデル誤差の推定を考案した。その結果、共分散膨張係数及び観測誤差の推定はよく機能し、NICAM-LETKFは安定して動作することを確認した。観測誤差の動的推定は、よく知られていない観測誤差を推定する手法として大変有用であり、今後のさらなる研究が望まれる。一方、モデル誤差の推定については、現在のデータ同化では陽に考慮していない場合も多い。特にアンサンブルデータ同化手法では、モデル誤差の影響を強く受けやすいため、モデル誤差の推定は大変重要であり、今後のさらなる研究が望まれる。 アンサンブルカルマンフィルタによるデータ同化手法では、各アンサンブル予報をサンプルとして予報誤差共分散を見積もる。この際、アンサンブルメンバー数が少ないことによりサンプリング誤差が生じるが、特にシグナルが小さい遠方の格子点で問題となる。このため、見積もられた誤差共分散に局所化関数を適用し、観測データの影響範囲を限定することにより、サンプリング誤差の問題に対処する。この際の局所化のスケールは、モデルの解像度を上げると小さくしなければならないことが知られており、雲解像モデルでは、観測の影響範囲がごく近傍に限られ、総観スケールの誤差を十分に修正できない恐れがある。そこで本研究では、マルチスケール構造を考慮したデータ同化手法を考案した。 具体的には、観測による修正量である解析インクリメントを、低波数成分と高波数成分に分ける点にある。低波数成分については、アンサンブル予報摂動を平滑化することで遠方のサンプリング誤差を低減し、遠方のサンプリング誤差を抑えたまま大きな局所化スケールを適用し、観測の影響範囲を広げることが可能となる。また、高波数成分については高解像度の摂動をそのまま用い、小さな局所化スケールを適用して小スケールの現象を捕捉する。スケールに応じた解析をすることにより、遠方の観測を効果的に同化し、解析誤差が全波数成分において大幅に改善することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高解像度モデルにアンサンブルデータ同化手法を適用する場合、少ないアンサンブルによるサンプリングエラーのため、遠方の観測を同化することができない。NICAMのような高解像度モデルに最適な同化手法を開発するためには、マルチスケールを考慮した手法の確立が必要である。本研究では将来の高解像度モデルに適したアンサンブルデータ同化手法の開発についての研究のもと、マルチスケールを考慮したアンサンブルデータ同化手法の研究が当初の計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、今後も高解像度モデルを念頭に置いたアンサンブルデータ同化手法の研究をすべく、所属機関である筑波大学及び理化学研究所計算科学研究機構において、T2K筑波システム及び京コンピュータ等を用い、マルチスケールを考慮した基礎的及び応用的なデータ同化手法の研究を進める予定である。
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Research Products
(4 results)