2012 Fiscal Year Annual Research Report
芯励起を取り入れた新たな核構造模型を用いた中性子過剰核における二中性子相関の解明
Project/Area Number |
12J01391
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 史治 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 原子核構造 |
Research Abstract |
原子核では非常に多彩で特異な物理が見られ、その一つとして少数の核子が空間的な相関をもつクラスター構造がある。それに関連し私はダイニュートロン相関に興味を持っている。ダイニュートロン相関とは自由空間では非束縛な二中性子がある状況下では強い空間的相関を持ちコンパクトになることであり、一種のクラスターのように振る舞うことが期待される。その一般的な性質や形成機構はいまだ未解明であり、それらを明らかにすることが本研究の目標である。今年度は中性子過剰核である10Beにおいて、実験ではまだ確認されていないクラスター構造を持った二種類の状態を示唆し、その特徴を詳細に解析した。その解析を通し、一つは4He+4He+ダイニュートロンというクラスター構造を持ち、クラスター間の相関は弱くそれぞれがガス的に振る舞う凝縮状態であることを示した。もう一つは6He+4Heという二つのクラスターから成る状態であり、4Heが非常に大きく発達した状態であることを示唆した。そしてそれぞれの状態の特徴的な構造から実験的にどのような物理量を測ればこれらの状態が見つけられるのかということも考察し、これらの結果は論文にまとめた。またその10Beの研究に加え、8Heにおける2ダイニュートロン構造(4He+2ダイニュートロン)を解析した。その解析から8Heにおいて4He+2ダイニュートロンから成るガス的なダイニュートロン凝縮状態と呼ばれる状態の存在の可能性とその状態の構造を示した。またその形成機構に関しても解析を行い、4Heとダイニュートロン間の引力がコンパクトなダイニュートロンを形成するためには不可欠であることを示した。これらの結果に関しては現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精力的に研究に取り組め、実験的にも未だ見つかっていない新しい状態が示唆でき、この成果は論文や国際会議などの場で大いにアピールすることができた。そして研究計画で予定していた通り、ダイニュートロン相関の系統的な研究に着手できる段階に入り、これまでにない新たな知見が得られてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在本研究の枠組みの基本が完成し、系統的な研究に着手できる段階に来ている。よって今後の方針としては、これまでダイニュートロン相関に関する先行研究がなされていない多くの原子核を、初めてダイニュートロン相関という視点で研究していくことができる。具体的には原子核の変形がダイニュートロン形成及びその分布にどのような影響を与えるのかを明らかにし、また複数のダイニュートロンが含まれる系において、それぞれのダイニュートロンが互いにどのように相関し合って分布するのかを詳細に解析する。
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Research Products
(5 results)