2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01430
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷口 晴香 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 一軸性圧力 / Ca_2RuO_4 / Sr_2RuO_4 / モット絶縁 / スピン三重項超伝導体 / 強磁性金属 / 4端子電気抵抗 / 磁化 |
Research Abstract |
ゼロ抵抗の観測は超伝導の有力な証拠となるので、接触抵抗を含まず試料だけの抵抗を検出できる4端子法の技術確立は、新奇超伝導探索のうえで重要である。そこで、広島大学の中村文彦助教の指導のもと申請者自ら設計した4端子測定可能な新しい圧力セルを用い、試行錯誤を繰り返した結果、遂に一軸圧下4端子抵抗測定の技術をほぼ確立するに至った。 [100]方向一軸圧下でモット絶縁体Ca2RuO4の4端子電気抵抗および磁化を測定し、試料の一部*に強磁性金属的振舞を観測し、強磁性転移温度TCurieの圧力依存性を調べた。(*一次の構造相転移によって反強磁性絶縁体から強磁性金属へと変化するので、両相の共存はある程度避けられない) 電気抵抗ではこれまでも我々の2端子測定で強磁性金属相は検出できていたが、磁場によって低温の抵抗が上昇する奇妙な振舞が観測されていた。この奇妙な振舞は4端子測定で消えたことから、バックグラウンド的なものの磁場依存性を拾っていたと結論できる。言い換えれば、40K以下の4端子抵抗の磁場依存は13K近傍で強磁性転移する金属相部分に由来しており(絶縁相の磁気転移はゼロ圧において113K)、強磁性転移の様子を抽出するにはゼロ磁場での抵抗から高磁場での抵抗を差し引いたものを見ればよい。この抵抗の差は磁気揺らぎの大きさを反映するので、これが最大になる温度をTCurieとみなせる。この解析によって絶縁相の抵抗の温度依存性に惑わされずにTCurieを見積もることが可能になったので、4端子抵抗測定の技術確立の意義は大きい。TCurieの圧力依存性については、強磁性の出現する0.4GPaから試料破損直前の1.5GPaまで、ずっと12K前後のままであることを明らかにした。 また、磁化測定において一軸圧下Ca2RuO4の強磁性を検出することに初めて成功した。さらに、反強磁性秩序部分はA型からB型の磁気構造へ移り変わることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゼロ抵抗検出に必要な4端子電気抵抗測定の技術を一軸圧下で確立することに成功した。さらに、その技術を用いてモット絶縁体Ca2RuO4への[100]方向一軸性圧力効果を調べ、基底状態が強磁性金属へ変化することを明らかにした。また、磁化測定でも強磁性相の発現を観測することに成功すると同時に、反強磁性相の磁気構造の変化も見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、博士論文執筆に向け、これまでに得られた成果の論文出版を目指す。また、Ca2RuO4への[110]方向一軸圧効果を同様にして解明し、圧力効果の面内異方性を明らかにする。さらに、Sr2RuO4への面内一軸圧効果も調べて新奇超伝導相の可能性を探り、Ru214系で実現するスピン三重項超伝導の起源に迫る。
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Research Products
(7 results)