2012 Fiscal Year Annual Research Report
多重ゼータ値の関係式および関連するモジュラー形式の研究
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12J01440
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田坂 浩二 九州大学, 大学院・数理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 多重ゼータ値 / 多重アイゼンシュタイン級数 / 2重シャッフル関係式 / レベル付き2重ゼータ値 / 周期多項式 |
Research Abstract |
今年度、主に研究に取り組んだのは(1)レベル2の2重ゼータ値の次元、3重ゼータ値の関係式(2)多重アイゼンシュタイン級数の2つである。(1)では、重さが奇数のレベル2の2重ゼータ値が張るベクトル空間の生成元(予想では基底となる)を決定した。レベルが1の場合に同様のことが知られており、より詳しく、具体的なモジュラー形式と2重ゼータ値の関係式との関係も知られる。今回の結果から、この具体的な関係もレベル2の場合に存在することが示唆された(次元の比較による)。また、今年度のF.Brown氏のプレプリントで、多重ゼータ値の新たな代数構造に関する予想が出された。これは多重ゼータ値に関わる重要な予想を大方含むような大変興味深い予想である。 私は周期多項式と3重ゼータ値の2重シャッフル関係式とのある関係性を数値実験から予想した。これは、深さ2における周期多項式と2重シャッフル関係式の間の具体的な関係の拡張を与えるものだと考えられ、Brown氏による予想解決の第一段階となると思われる。(2)多重ゼータ値とモジュラー形式の間を結びつける一つの道具である、多重アイゼンシュタイン級数の計算を行った。多重アイゼンシュタイン級数とは、その空間の次元、また無限遠点で0になるような多重アイゼンシュタイン級数の空間の部分空間の構造がわかれば、多重ゼータ値の代数構造も見えてくるような対象となっており、またこれまでとは違ったアプローチによる多重ゼータ値の研究を与え、大変意義深い。これはHamburg大学のBachmann氏と共同で計算を始めたもので、現在のところ一般に多重アイゼンシュタイン級数をどのように定義するのかを実験的に探し、今までできていなかった最初のインデックスが2の場合の多重アイゼンシュタイン級数の定義について、一定の知見を得た。また、重さが7までの多重アイゼンシュタイン級数が張るベクトル空間の次元を具体的に求めることにより、多重ゼータ値の次元や代数構造とは少し異なる状況になるということがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レベル付きの多重ゼータ値を数値実験するプログラムを作りたかったが、あまりうまくいっていない。これにより、レペル付きの多重ゼータ値の間の線形関係式を類推する課題が捗っていない。しかし、多重アイゼンシュタイン級数の研究は、協力者のおかげもあって、'多少進展してきている。
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Strategy for Future Research Activity |
数値実験によるレベル付き多重ゼータ値の関係式の推察という面ははかどっていないが、古典的な楕円関数の加法公式などを応用して、レベル付きの2重ゼータ値の関係式が得られる。これはレベル1の場合に、本質的に深さ2の2重シャッフル関係式に関係しているものであるので、数値実験によらない新しい関係式探しを試みることが可能と思われる。そこからレベル付きの2重アイゼンシュタイン級数との関係を見出していきたい。
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Research Products
(7 results)