2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノサイズ粒子間力から紐解く超高強度コンクリートの流動挙動とその応用
Project/Area Number |
12J01469
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
後藤 卓 北海道大学, 大学院・工学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ポリカルボン酸系分散剤 / セメントペースト / 凝集・分散 / 粒子間力 / 立体力 / レオロジー / 水和反応 / サスペンジョン |
Research Abstract |
本研究の目的は、ポリカルボン酸系分散剤(以下PCとする)のナノサイズの物性と超高強度コンクリートの粘度を関連付ける数理モデルの構築にある。セメントペーストでは、水和反応の影響による流動性低下と、サスペンジョンの物性による粘度発現を明確に区別する必要があるため、本年度はセメント系ではデータ取得と問題点の具体化に留め、まず非水和反応系の凝集サスペンジョンにおいて流動性の推定モデルの確立、粒子表面サイトに対するPCの吸着モデルの構築を中心に検討を行なった。 本研究では粘性とPC吸着時の粒子間力を結び付けるために、粒子間力とせん断に対する凝集粒子の構造変化を、フラクタル次元を用いて定量的に表し、さらにその凝集粒子間の速度勾配より粘性発現をモデル化した。このレオロジーモデルを濃厚系凝集サスペンジョンの実測値に適用したところ、サスペンジョンの種類によらずせん断場での凝集体のフラクタル次元が体積濃度ともに増加し、3に漸近する傾向が見られた。また、セメントペーストに対するモデル適用も試みており、これらの成果は2編の論文にて公開されている。 非反応系のサスペンジョンに対して、化学構造、分子量が明確であり、主鎖側鎖比の異なるPCを用いて、吸着挙動をモデル化した。その結果、粒子表面と液相イオン間の吸着平衡の計算より推定された吸着サイトと、PCの主鎖側鎖比を用いてPCの吸着量を表すことができた。この成果はセメント・コンクリート論文集にて公開されており、上記のサスペンジョンの吸着時の流動性は2013年度セメント技術大会にて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数理モデルの構築にあたり、PC吸着挙動の予測、吸着量と流動性発現の関係、レオロジーモデルにおけるせん断や体積淡度の影響など、研究を進めるにつれて生じた課題を明確にし、その解明を行なうことができた。 また、水和反応の影響は表面性状の変化として考慮し、モデル表面としてAl_2O_3,SiO_2,CaCO_3を想定することで、本年度の非水和反応系でのデータ取得とモデル構築の知見をセメント系に適用可能と考えられるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
水和反応を生じない系での成果について、吸着量と流動性発現の関係、レオロジーモデルにおける各パラメータの感度解析の実証に関しては、近く論文にて発表する予定である。次に、水和生成物が析出するセメント系への拡張では、水和物への吸着量、水和物による流動性低下の影響を差し引いた上で、非水和反応系で構築した吸着モデル、レオロジーモデルが適用できるのかを確認し、モデルの改良を行なう。同時に温度影響、イオンの影響についてもデータ取りを行ないつつ、'モデルが完成次第適用していく予定である。
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Research Products
(4 results)