2012 Fiscal Year Annual Research Report
逐次二光子吸収分子動力学法を用いたジアリールエテン誘導体の励起状態反応制御
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12J01481
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
奥野 克樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ジアリールエテン / フォトクロミズム / 時間依存密度汎関数法 |
Research Abstract |
本研究は、量子化学に基づくジアリールエテン誘導体の逐次二光子吸収過程の機構解明と、本過程を用いた反応制御法の提案を目的としている。平成24年度は、時間依存密度汎関数法に基づく、ジアリールエテン誘導体の励起状態計算法の検討を行った。 これまでの研究で1)従来の交換相関汎関数を用いた計算では実験で得られた励起エネルギーを再現できないこと、2)長距離補正汎関数を用い、この汎関数中のパラメーターをある1つの分子に対して実験値を再現するように決定すれば、類似の分子では同じパラメーターで実験値を再現できることが分かっていた。 上述の方法では実験値のない分子に対してはパラメーターを決めることが出来ないため、今回はRoi Baerらが提案した実験値を用いず、計算で得られるイオン化エネルギーと分子軌道のエネルギーからパラメーターを決定する方法をジアリールエテン誘導体に適用した。その結果、閉環体・開環体の両具性体で実験値を用いて決定したパラメーターとほぼ同様のパラメーターが得らた。また、このパラメーターを用いた計算によって、両異性体の励起エネルギーの実験値を非常に精度良く再現することに成功した。また、閉環体と開環体のそれぞれに対するパラメーターの平均値を用いた計算でも両異性体の励起エネルギーを非常によく再現することから、このパラメーターを用いた計算法はジアリールエテン誘導体の励起状態おける環開閉反応の追跡にも適用可能と考えられる。 これより、本方法は未測定や未知の系を含む場合の先験的な理論物質設計に用いる計算法として非常に期待できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は電子状態間の遷移を含む動力学の計算法と二光子吸収過程の計算法の実装を予定していた。前者は1つの断熱面上の動力学を計算するプログラムまでは実装が完了した。しかし、この過程で行ったテスト計算によりジアリールエテン誘導体は開環反応の途中で強い開殻性を有することが分かり、通常の時間依存密度汎関数法の適用が困難であることが分かった。以降は通常の時間依存密度汎関数法に代わる計算法を検討していたため、二光子吸収過程の計算法の実装は実現していない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、ジアリールエテン誘導体の環開閉反応過程の途中では、強い開殻性を示すことが明らかになり、通常の時間依存密度汎関数法の適用が困難であることが分かった。以後はこの計算法に代わって高スピソ状態を参照するspin-flip時間依存密度汎関数法の適用妥当性を検討していく予定である。
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Research Products
(20 results)