2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒューマンセントリック位置推定手法とその応用に関する研究
Project/Area Number |
12J01513
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
樋口 雄大 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 位置推定 / モバイルセンシング / デッドレコニング / モバイルアドホックネットワーク / 歩行者ナビゲーション / 環境認識 |
Research Abstract |
スマートフォンによるセンシングとクラウド技術との連携により、ユーザの振る舞いや周辺状況に応じたきめ細かなユビキタスサービスが提供されつつある。こうしたサービスを実現する上で重要な手掛かりとなるのが、ユーザの位置情報である。モバイル端末向けの測位技術としてはGPSが広く用いられているが、ユーザにとって、より身近で利便性の高いサービスを提供するためには、GPSの利用が困難な屋内向けの測位技術が欠かせない。本研究では、スマートフォンなど市販のモバイル端末群から収集したセンサ情報を効果的に集約・統合することで、屋内外を問わず、ユーザの位置や環境内の状況を高精度に認識する手法を提案し、次世代ユビキタスサービスの実現に向けた技術向上へ貢献することを目標とする。 本年度は、イベント会場など多くの人々が集まる環境において、近隣のスマートフォンユーザ間の相対的な位置関係を低コストに推定するためのアーキテクチャとアルゴリズムの研究に取り組んだ。提案手法では、加速度センサおよび電子コンパスの計測値から推定したユーザの移動軌跡情報と、端末間で観測されたBluetoothの受信電波強度情報をサーバ上へ集約し、ユーザ同士が遭遇したと推定される地点でこれらの軌跡を重ね合わせることで、相対位置を導く。このとき、ユーザ間の移動パターンの類似性をもとに推定位置をヒューリスティックに補正することで、センサノイズ等に起因する位置推定誤差の軽減を図っている。展示会場において20台のAndroid端末を用いた実証実験を行い、従来手法と比較して、相対位置推定精度を28%改善できることを示した。さらに、提案手法の応用として、相対位置推定結果とスマートフォンのカメラ画像を併用して周辺人物の認識を行う手法や、モバイル端末群のセンサ情報を用いて災害現場等の地図情報を生成する手法の研究にも取り組んでおり、いずれも、シミュレーションや実機実験からその有用性を確認している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、スマートフォン端末のセンサおよびBluetoothによる近距離無線通信を用いた相対位置推定手法の研究に取り組んだ。提案手法は、市販のモバイル端末上で取得可能なセンサ情報のみを用いたシンプルかつ低コストな手法であり、シミュレーションや実証実験により、従来手法と比較して高精度な推定が実現できることを確認している。また、提案手法の応用システムとして、相対位置推定結果とスマートフォンのカメラ画像を併用して周辺人物の認識を行う手法や、モバイル端末群のセンサ情報と通信履歴を用いて災害現場等の地図情報を生成する手法の研究にも取り組んでおり、いずれも、シミュレーションや実機実験からその有用性を示している。これらの研究成果は、国際会議2件、国内研究会3件で発表しており、情報処理学会2012年度山下記念研究賞(研究会およびシンポジウム発表論文のうち優秀なものを選び、その発表者を、研究会ごとに毎年1編ないし2編選定)を受賞するなど、外部からも高く評価されている。以上の理由から、当初の計画以上に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
群衆の移動パターンの類似性を活用して位置推定誤差の軽減を図るという提案手法の本質的なアイデアは、イベント会場など地理的に限定された環境だけでなく、より大規模な公共空間においても有効であると考えられる。例えば、ラッシュアワーの駅や混雑した地下街では、同じ方向へ向かう歩行者によって人流が形成される。人流に沿って歩行する群衆の移動軌跡の類似性を活用して個々のユーザの推定位置を補正すれば、空間内の人の位置や動きを高い精度で認識し、ナビゲーション等に役立てることが可能である。ただし、公共空間においては、必ずしもすべての歩行者がセンサ情報を収集可能なモバイル端末を保持しているとは限らないため、人の移動に関する統計的なモデルと、端末を保持する一部の群衆から得られるセンサ情報とを組み合わせて空間内の人の流れを推定するなど、不足した情報を補うための枠組みが求められる。また、モバイル端末の電力や通信帯域には厳しい制約があるため、リソースの消費を最小限に抑えるための効率的な情報共有プロトコルを設計することも重要な課題である。来年度以降は、こうした技術課題の解決を図り、提案手法の実環境への適用性を高めるとともに、同手法によって得られた位置情報や環境情報を活用した応用システムについても、さらなる検討を行なっていく。
|
Research Products
(5 results)