2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01520
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
服部 達哉 麻布大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 性認知 / ESP1 / 扁桃体内側核 / 性差 / リムホメオドメイン(Lhx) |
Research Abstract |
本研究では、雄シグナルとして性認知に利用されるフェロモン物質であるESP1が雌マウスのロードシス反射を亢進し、雄マウスの攻撃行動を誘起するものの、どのような神経学的メカニズムによって雌雄の社会行動に性差をもたらすかの解明を目的としている。そこで本年度は、ESP1特異的受容体V2Rp5から視床下部の社会行動制御領域に至る神経回路の中で、扁桃体内側核(MEA)がESP1作用の性差発現の起点であるとし、MEAの解剖学的・機能的性差を詳細に解析してきた。 本年度は、ESP1により活性化される雌雄のMEA亜核の同定を目指した。雌雄マウスへESP1を暴露し、神経細胞の活性化の指標となるc-Fosに対する抗体を用いた免疫染色法を実施し、ESP1に特異的に活性化したMEA亜核を標識した。その結果、雌ではMEA亜核のうち尾側背側部MEApd、雄では尾側腹側部MEApvがそれぞれ活性化することを明らかにした。MEA亜核には、転写調節因子であるLhx6、Lhx9が領域特異的な発現パターンを示すことが明らかになっている。これらLhxの抗体を用いた免疫染色法の結果、発現パターンに性差がないことを新たに示した。そこで、LhxをMEA亜核の領域マーカーとして用い、c-Fosとの二重免疫染色法を行った。その結果、ESP1を暴露された雌では、MEApdのうちLhx6を発現する神経細胞が、雄ではMEApvのうちLhx9を発現する神経細胞が、それぞれESP1特異的に活性化することを明らかにした。 これらの結果は、ESP1という単一のフェロモン物質の受容から視床下部に至る鋤鼻神経系の中で、最初の性差が表れる領域がMEAであることを強く示唆し、嗅覚研究領域における雌雄の社会行動の性差発現のための脳内メカニズム解明へ新たな知見を示すものであるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究内容の報告として論文投稿に至っていないことから、今後は積極的な投稿を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した結果を基に、MEA亜核の機能的性差が雌雄マウスそれぞれの社会行動発現に重要であり、ESP1作用の性差発現の起点であることを明らかにしていく。神経活性特異的に人工的な興奮性G蛋白受容体を発現させることで、神経活性を制御できるTgマウスを用い、ESP1に対して特異的に活性化した神経細胞を人為的に再活性化させたとき、雌雄の社会行動が発現するかどうかを行動評価していく予定である。
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