2013 Fiscal Year Annual Research Report
有明海における精緻な海域・流域データを用いた栄養塩統合管理に関する研究
Project/Area Number |
12J01526
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田畑 俊範 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有明海 / 栄養塩 / 数値流体力学モデル / 生態系モデル / タイラギ / ボックスモデル |
Research Abstract |
今年度は, 3つの研究内容について遂行した. 1つ目は「有明海を対象としたマルチボックス生態系モデルの構築」である. 本研究では, 計算時間が短くパラメータ調整が容易となるマルチボックス生態系モデルの開発を昨年度より行っており, 3次元流動・生態系モデルの構築に必要となる知見を得ることを目的としている. モデルの再現性の検証には福岡県, 佐賀県, 熊本県が行っている浅海定線調査結果を用いた. この結果, それぞれの水質項目について高い再現性を有していることが示された. 2つ目は, 「有明海における多変量解析による海域環境の現状の把握」である. 本研究課題である有明海における栄養塩統合管理を目指すにあたり, 海域環境についての現状把握, および, 過去から現在までの海城環境の変遷について理解することは非常に重要である. そこで, まず福岡県, 佐賀県, 長崎県, 熊本県が有明海を対象に行っている浅海定線調査のデータを収集し, 多変量解析を行った. その結果, 有明海の西部海域において貧酸素水塊の発生傾向が東部海域と比較して高いことが示された. 3つ目は「3次元σ座標系モデルの構築」である. 本研究課題の最終目標としては, 3次元流動・生態系モデルを用いた有明海の栄養塩銃合管理を行うことである. 有明海は日本最大の潮位差をもつため, 通常の座標系を用いた3次元流動モデルでは沿岸域での潮流の再現計算は難しい. そのため, 鉛直の座標系に沿岸域の再現性が高いσ座標系を用いたモデルの構築を行っている. 現在, 流動についてのモデルの構築はほぼ完了しているが, 干潟付近における流速の過大評価が見られ, その対応策を検討している. 今後は拡散についてのモデルの構築を目指す. 3次元σ座標系モデルの構築が完了次第, 今年度構築した生態系モデルを組み込む, 最終的に, 完成したモデルを用いたシナリオ分析を行い, 有明海における栄養塩統合管理を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では, 有明海を対象とし, 海域の水環境保全と持続的な漁業生産の両立を目指している. 本年度では, 最終的に構築する3次元流動・生態系モデルのプロトタイプとなるものを構築した. また, 多変量解析を行うことで有明海の海域環境についての理解を深めた. さらに, 3次元σ標系モデルの構築をほぼ完了した. 以上のように本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では, まず, 多変量解析を基に海域環境のクラスター分析を行い, 海域環境の領域・年ごとの特徴を抽出することで栄養塩統合管理に資する知見を得る. そして, 現在3次元σ座標系モデルの干潟付近での流動の過大評価がみられるためその対応について検討を行う. その後, 拡散モデルを組み込み, 3次元σ座標系モデルの完成を目指す. モデルが完成次第, 昨年度構築した生態系モデルを組み込み, 最終的に栄養塩統合管理に向けたシナリオ分析を行う.
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Research Products
(1 results)