2013 Fiscal Year Annual Research Report
自己注目による抑うつ予防法の検討:認知・生活習慣・対人相互作用からのアプローチ
Project/Area Number |
12J01573
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高野 慶輔 日本大学, 文理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自己注目 / 反芻 / 抑うつ |
Research Abstract |
自己に関するネガティブな持続的認知である反芻は, 抑うつやうつ病のリスクファクターであることが知られている。過去に経験した嫌な出来事や, ネガティブな気分状態について過度に考え込んでしまうことによって, うつうつとした気分が持続し, 抑うつ症状が発生するとされている。前年度においては日常場面において, 反芻がどのように機能しているかを検討した。経験サンプリング法を用いて自由行動下での思考・感情・活動のモニタリングを実施し, 食事や趣味の活動など特定の日常的活動が反芻の抑制に関わっていることを明らかにした。本年度においてはこの結果を発展させ, 反芻的思考と不適応との関連として, ネガティブ感情と生理的覚醒との関連を, 同じく日常場面において検討した。この調査の結果, 反芻的思考を経験しているときはネガティブな感情が高まること, そして特に夜間に生じた反芻は副交感神経活動の減退と関連し, 生理的緊張の維持に関連していることが明らかとなった。こうした夜間に生じた反芻的思考と生理的覚醒は, 睡眠の質の悪化と関連すること, 睡眠の質の低下は翌朝の気分状態に悪影響を及ぼすことが知られ, 反芻による感情的・生理的覚醒から睡眠の質の低下, そして気分の問題という一連の悪循環が生じている可能性が示唆された。さらに, この反芻に対する対処として, 認知バイアス修正法に基づくアプローチを行い, ポジティブな自己関連の情報と報酬との連合を学習することで, 反芻的思考に見られるようなネガティブな自己関連の情報処理を回避することが可能かを検討した。抑うつ傾向が高い人においては, こうした学習には時間がかかるものの, 十分な試行数を確保できればポジティブな情報と報酬との連合を形成しネガティブな情報を回避することができるようになることを示唆した。以上の研究結果は, 反芻と抑うつに関わる現象学的・病理学的な理解を促進し, 反芻に対する介入と予防法の基礎となりうると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では, 反芻が日常場面においてどのように心理的・身体的不適応と関連しているのか, その病理学的な理解を得た。いずれのデータも学術誌において公表され, 反芻予防のためのトレーニングの開発も初めの段階が終了し, 学術集会にて報告を行った。以上のことから研究は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により, 日常場面で生じる反芻的思考が心身の健康に対して悪影響をもたらしていること, また一定の学習によって, ネガティブ情報処理を回避することができるようになること, が明らかとなった。この結果を元に今後は, 反劉に関わる認知機能の問題に対する介入の可能性について, 注意や記憶, 学習といった様々な側面から検討し, その効果と持続性を実証的に検討する予定である。
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Research Products
(6 results)