2012 Fiscal Year Annual Research Report
血管弛緩を誘導する低分子ペプチドの生理とその発現機構の網羅的解明
Project/Area Number |
12J01585
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小林 優多_ 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペプチド / 血管弛緩作用 / 抗炎症作用 |
Research Abstract |
低分子ペプチド(Trp-His)による血管弛緩作用の発現には、カルモジュリン(CaM)シグナルを介したCa^<2+>関連収縮シグナル系の遮断が関わっている可能性を見出してきた。血圧関連臓器に局在するCaM-Ca^<2+>系を制御することにより、血管系疾患(動脈硬化症、心肥大、腎不全)を予防する可能性がある。そこで、本研究では、血管をはじめとする血圧調節組織での生理機能を明示するために、活性ペプチドの構造要件、細胞内Ca^<2+>シグナル系抑制機構の網羅的解明を目的とした。今年度は、ペプチドとCaMの相互作用およびペプチドの抗炎症作用に関する詳細な知見の獲得を行った。 1.ペプチドとCaMの相互作用解析 ペプチドがCaMとCa^<2+>の結合を阻害する可能性があることに着目し、CaM-Ca^<2+>複合体を蛍光標識するアッセイ系を構築した。 本アッセイ系により、血管弛緩ペプチド(Trp-His)が複合体形成を阻害することを明らかにした。現在、活性ペプチドの構造要件の解析を進めている。さらに、分子動力学計算プログラムAmber12を用いて、水環境下で安定なペプチドーCaM複合体を獲得した。現在、ペプチド結合部位・結合エネルギーのin silico解析を進めている。 2.ペプチドの抗炎症作用(Dr.Mine Lab,University of Guelph(Canada)にて実施) TNF-α刺激により得られる炎症系細胞において、Trp-Hisが炎症性サイトカインの産生を抑制することを明らかにした。ざらに、腸炎症モデルマウスにTrp-Hisを投与した結果、Trp-Hisによる炎症抑制作用が確認された。現在、ペプチドによる抗炎症作用の詳細なメカニズム解明を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新たに構築したアッセイ系により、ペプチドの細胞内Ca^<2+>シグナル系抑制作用を評価することに成功した。さらに、University of Guelph(Canada)にて関連するペプチド機能について深化的な研究交流を実施し、当該ペプチドの抗炎症作用を実証した。よって、当初の研究実施計画をおおむね達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、血管をはじめとする血圧調節組織での生理機能を明示するために、活性ペプチドの構造要件、細胞内Ca^<2+>シグナル系抑制機構の網羅的解明を目的とした。今後も、細胞内Ca^<2+>調節ペプチドの構造要件および炎症刺激細胞内での生理作用の解明を引き続き進める予定である。
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