2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子線エピタキシー法を用いた新奇重い電子系超伝導の創出とその研究
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12J01649
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水上 雄太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2012 – 2014-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導 / 超伝導対称性 / 磁場侵入長 |
Research Abstract |
近年、強相関電子系において従来の機構では説明がつかない超伝導体が数多く発見されており、その発現機構を解明するための研究が世界中で精力的に行われている。その中でもとりわけ2008年に発見された鉄系超伝導体は、それまでは超伝導と競合関係にあるとされていた磁性を示す鉄元素を含むにも関わらず高い超伝導転移温度を持ち、その機構解明は現代の凝縮系物理学の中心的課題の一つである。 一般に超伝導発現機構を解明するためには、それと密に関係する超伝導対称性を決定することが最も有効な手段の一つである。鉄系超伝導体Ba_<1-x>K_xFe_2As_2においては、その超伝導ギャップ構造は最適組成領域ではフルギャップ、ホールドープエンドではノーダルであることが多くの実験結果より示されている。この系における超伝導対称性を明らかにするためにはその中間組成域での超伝導ギャップ構造を決定することが重要である。そこで、我々は、この系におけるホールドープエンド近傍の組成x=1.0, 0.93, 0.91, 0.88, 0.86, 0.76, 0.69の精密磁場侵入長測定を行った。その結果、0.86と0.76の間でノーダルノフルギャップの変化が生じることが分かった。更に、ノーダルの領域である0.86≦x≦1.0における磁場侵入長の勾配の組成依存性が非単調に変化することが明らかとなった。この特異な振る舞いは、銅酸化物高温超伝導体や重い電子系で実現されている磁超伝導対称性とは矛盾するが、異なるフェルミ面間で符号が反転したs波超伝導対称性においてノード位置が組成により変化すると仮定したモデルで説明することができる。また、この磁場侵入長測定と定性的に一致する結果が、本研究グループの熱伝導率測定からも得られており、s波超伝導対称性を支持している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的は、強相関電子系における超伝導発現機構を解明するために重要と考えられる超伝導対称性を明らかにすることである。本年度においては、鉄系超伝導体Ba_<1-x>K_xFe_2As_2において精密磁場侵入長測定を系統的に行うことでその超伝導対称性を明らかにすることに成功したと考えられるため、本年度の研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄系超伝導体BaFe_2(As_1-xP_x)_2において、P置換に伴い反強磁性秩序へ転移する温度が抑制されるが、最近の研究により反強磁性秩序が完全に抑制され消失する点に量子臨界点の存在を示す結果が得られた。更に、その点において超伝導転移温度が最大となっていることが明らかとなった。従って、鉄系超伝導体の超伝導発現機構を理解する上でこの量子臨界点と超伝導相の関係を明らかにすることが非常に重要であると考えられる。 そこで、今後BaFe_2(As_<1-x>P_x)_2に不純物を導入しそれに伴いこの物質の温度組成相図がどのように変化するか調べることで超伝導と量子臨界点の関係について調べる予定である。
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Research Products
(6 results)