2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01742
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 克 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 物性理論 / 強相電子系 / 界面・表面 / モット絶縁体 / トポロジカル絶縁体 / 重い電子系 |
Research Abstract |
薄膜作成技術の急速な進展に伴って、近年、強相関電子系のヘテロ接合において興味深い界面物性が多数報告されている。こうした非一様系における電子相関効果の性質を明確にすべく、次の2つの解析を行った。 1) トポロジカル絶縁体とモット絶縁体のヘテロ接合を考え、電子相関効果がトポロジカル絶縁体のエッジ状態に及ぼす影響について理論的解析を行った。前年度の研究では、界面での近接効果がモット絶縁体領域にヘリカルなエネルギー分散を持ったミッドギャップ状態を形成することを指摘した。本研究では、トポロジカル絶縁体における電子相関効果が、そのエッジ状態に及ぼす影響について詳細な解析を行った。その結果、ミッドギャップ状態はトポロジカル絶縁体領域のハバード作用に強く影響され、その繰り込み因子は、モット絶縁体領域内で指数関数的に減衰することを見出した。また、界面における電子ホッピングの変化が、接合系のドゥルーデ重みや光学伝導度に及ぼす影響について解析を行った。その結果、界面におけるバンド構造の再構成が、光学伝導度に特徴的なピーク構造を形成することを明らかにした。 2)本研究では、近藤絶縁体とバンド絶縁体からなるヘテロ接合系を考え、電荷分布の空間変調によって実現する界面電子状態について理論的に研究を行った。その結果、ヘテロ界面の近傍では近藤絶縁体領域からバンド絶縁体領域へと電荷の移動が生じ、これによって界面で重い電子状態が形成されることを新たに見出した。さらに、こうした振る舞いは接合系の電気伝導度に強く反映されることを指摘すると共に、電気伝導度の大きさは近藤絶縁体層の積層数にも強く依存することを見出した。次に、近藤絶縁体層の積層数の変化が、ヘテロ界面の磁気的な性質に及ぼす影響について解析を行った。解析では、磁気構造として強磁性と反強磁性のみを考慮した。その結果、積層数が小さな領域において、強磁性状態が安定化することを明らかにした。この性質は、近藤相互作用の大きさによらず、積層数の変化や長距離クーロン相互作用の大きさで決定されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
強相関電子系の界面物性を理解すべく、モット絶縁体や重い電子系に基礎を置くヘテロ接合系を対象にして、その界面電子状態を理論的に解析した。その結果、系の非一様性を反映し、界面近傍で特徴的な電子状態が実現することを明らかにした。これらの研究成果はPhysical ReviewB誌、及び、Strongly Correlated Electron SystemsのProceedingsに掲載されると共に、Swiss-Kyoto Symposiumにおいて招待講演に選ばれるなど、豊富な研究成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度までの研究によって、電子相関効果に起因した、強相関ヘテロ接合系特有の界面電子状態の存在を指摘した。一方、界面における電子物性の制御可能性を議論するう、えで、人工超格子構造にっいての理解は不可欠である。例えば、LaMnO_3/SrMnO_3やCeIn_3/LaIn_3などの超格子では、積層数を調整することによって磁気秩序が制御可能であることが報告されている。これらの実験結果を踏まえ、本年度は、モット絶縁体を含む人工格子構造を考え、系の周期構造と界面物性の関連について系統的な理解を目指す。 また、MnやNiなどの人工超格子では、系の非一様性が電子軌道の異方性と結び付き、バルクでは実現しないような電子状態を示すことが指摘されている。そこで、電子の軌道自由度まで考慮にいれた理論模型を用いることによって、系の非一様性に起因した新規な界面物性の可能性についての理解を目指す。
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