Research Abstract |
本年度は,地球流体物理学に現れる基礎方程式である,回転座標系におけるCoriolis力の影響を考慮した非圧縮性Euler方程式および非圧縮性Navier-Stokes方程式に関する研究を行なった.同方程式の解は,回転の影響が大きい場合に,分散性および異方性を示すことが知られているが,本年度は特に分散性に焦点を当てて研究を行なった.分散性に測る定量的な評価として,Coriolis力によって生成される線形半群(以下,Coriolis半群)に対する最適な分散型評価およびStrichartz型評価を考察した. 現在までの先行研究において得られている分散型評価は,全て1次元分の減衰効果を示すものであり,更に増大因子として対数項を含んでいた.本研究においては,それらの先行研究を改良し,2次元分の減衰効果を示す分散型評価を導出した.また,ここで得られた分散型評価の応用として,Coriolis力付きNavier-Stokes方程式の初期値問題について考察した.スケール劣臨界な関数空間に属する初期値に対して,時間大域解の存在を考察し,任意の初期値に対して回転速度を十分大きく取ると,同方程式に時間大域的一意解が存在することを証明した. 上記の研究で得られた2次元分の減衰効果を示す分散型評価および適切な反例の構成によって,Strichartz評価の成立する指数の最適な許容範囲を導出した。この許容範囲の最適性により,上記の研究で得られた分散型評価が,多項式オーダーの範疇では最適であることが導かれる.また,ここで得られたStrichartz型評価の応用として,Coriolis力付き3次元Euler方程式の初期値問題について考察した.Coriolis力の影響がある場合,任意の初期値と任意の有限な時刻Tに対して,回転速度を十分大きく取ると,同方程式に区間[0,T]上での古典解が一意存在することを証明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究成果は,回転流体の長時間挙動における分散性の影響に関するものである.Coriolis力から生じる分散性の時間減衰線形評価,および時空積分線形評価を最良の形で導出し,それを用いて,Coriolis力が十分大きい場合に,非圧縮性Euler方程式およびNavier-Stokes方程式の初期値問題に関して大域可解性を証明した.本研究成果により,3次元全空間におけるCoriolis力の分散性に関する定量的評価は,ほぼ完成したと言って良い.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成24年度の研究で得られたCoriolis力に対する分散型評価の応用として,回転速度無限大における流体速度場の漸近挙動を考察する.具体的には,Coriolis力付きNavier-Stokes方程式およびEuler方程式の特異極限問題を考察し,Coriolisパラメータを無限大とした際に,方程式の解が2次元流に漸近することを証明する.特に,平成24年度の研究で得られた,Coriolis半群に対する最良の時間減衰線形評価および時空積分線形評価を用いることによって,方程式の解が2次元流に漸近する最適な漸近レートを,回転速度の観点から与える.
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