2013 Fiscal Year Annual Research Report
新規因子によるプラスミドを用いたヒト血球細胞からの人工多能性幹細胞誘導効率の上昇
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12J01971
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山川 達也 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | iPS細胞 / ヒトcDNAライブラリー / スクリーニング / 初期化 |
Research Abstract |
人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製が初めて報告されて以来、さまざまな因子がiPS細胞の誘導効率を上昇させることが報告された。それらの報告された因子の中には、誘導効率を上昇させるのみでなく、体細胞初期化の過程で何が起きているかを知るための有用な手がかりになるものが存在する。そこで、申請者は初期化機構解明の手がかりとして、既存の因子のみでなく新規の因子を同定するために、約2000個の遺伝子からなるヒトcDNAライブラリーを用いたスクリーニング系を立ち上げた。このライブラリーには約1,700個の転写因子と約200個のキナーゼが含まれている。本年度は、前年度に立ち上げたスクリーニング系を用いて、約2000個の因子についてiPS細胞誘導効率への影響を評価した。 その結果、iPS細胞の誘導効率を2倍以上に上昇させる122因子と、0.2倍以下に減少させる183因子を同定した。この中から、特に高い誘導効率の上昇を示した2因子(X、Y)に関して詳細な解析を行うこととした。この2因子は、iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞での発現は線維芽細胞より低いにもかかわらず、iPS細胞誘導時に過剰発現させる事で誘導効率を上昇していることが明らかになった。さらに、XおよびYが共通のタンパク質ドメインを持つ事がわかり、この2因子の共通の機能がiPS細胞誘導時に重要な機能を持つのではないかと考えた。そこで、これら2因子を導入した体細胞が初期化過程においてどのような挙動を示すかを調べた。その結果、これら2因子は初期化過程の初期においてヒト多能性幹細胞のマーカーであるTRA1-60陽性細胞の割合を上昇させる事がわかった。現在は、XとYが体細胞初期化過程においてどのように遺伝子発現を変化させているのかを、microarray法を用いて解析し、その機構について研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度より続けているiPS細胞誘導効率改善のための新規因子のスクリーニンクを精力的に行った。転写因子1700因子と、キナーゼ200因子を含むヒトcDNAライブラリーを用いたスクリーニングの結果、iPS細胞の誘導効率を2倍以上に上昇させる122因子と、0.2倍以下に減少させる183因子を同定した。さらには、これらの中から特に高い誘導効率の上昇を示した2因子(X、Y)に関して詳細な解析を行い、これらの因子によって初期化初期の細胞の変化に差が生じる事を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った一次スクリーニシグにおいて同定された、iPS細胞の誘導効率を2倍以上に上昇させる122因子と、0.2倍以下に減少させる183因子について、その再現性を確認するための二次スクリーニングを行う必要がある。 さらに、特に高い誘導効率の上昇を示した2因子(X、Y)について、体細胞初期化の初期にヒト多能性幹細胞のマーカーであるTRA1-60陽性細胞の割合を上昇させる事を明らかにしたが、その理由については明らかになっていない。今後は、TRA1-60陽性細胞の遺伝子発現に差があるかを見るためのmicroarrayや、下流因子同定のためのChIP-seqを行う予定である。
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