2012 Fiscal Year Annual Research Report
オリビン型遷移金属酸化物における新規電子物性の創成及びその解明
Project/Area Number |
12J01989
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
本田 孝志 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Mn_2GeO_4 / マルチフェロイクス / オリビン構造 / 強磁性強誘電体 |
Research Abstract |
本特別研究員は、平成23年度にオリビン構造を有するマンガン酸化物Mn_2GeO_4において強磁性かつ強誘電性を示すマルチフェロイック特性を示すことを発見した。平成24年度には同マルチフェロイック特性の起源を解明するために、磁性・誘電性などのバルク物性測定に加え、放射光X線回折及び中性子線回折といった手法を用いた微視的な結晶・磁気構造測定を行った。これらの測定には、KEK-PFといった国内研究機関だけでなく、スイスのPaul Scherrer Institut(PSI)及びフランスのInstitut Laue-Langevin(ILL)といった海外の研究機関において行った。 これらの実験の成果として、格子整合な磁気構造と非整合な磁気構造の重ね合わせという多成分磁気構造であることがわかった。格子整合な磁気構造がc軸方向の強磁性成分を担い、非整合な磁気構造であるらせん磁気構造が「スピン流機構」から説明できる強誘電性を担っている。このような磁気構造から、強磁性成分と電気分極が平行であるという新しいタイプのマルチフェロイック特性の発現機構を明らかにした。 オリビン構造における主な相互作用は一次元鎖間のMn-O-Mnの超交換相互作用であり、らせん磁気構造の起源は鎖内の相互作用によるものである。この相互作用を変化させ物性の変化を見るために、Ge^<4+>サイトにイオン半径の小さいSi^<4+>の元素置換を行った。その結果、置換することにより格子定数が小さくなり、鎖間のMn-O-Mnのボンド角が小さくなり、180度から遠ざかるため反強磁性的な超交換相互作用が弱くなる。元素置換効果による研究成果に関しては、現在論文作成中である。 それだけではなく、最近、室温で電気磁気効果を示すことが明らかとなったSr_4Co_2Fe_<36>O_<60>に対して放射光X線回折測定および構造解析を行い、詳細な結晶構造を初めて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁歪などのバルク物性測定に加え、放射光X線回折および中性子線回折といった手法を用いた微視的な結晶・磁気構造測定を行った。これらの測定には、KEK-PFといった国内研究機関だけでなく、スイスPSIおよびフランスILしといった海外の研究機関においても自らの作製した試料を携えて、自ら出向いて実験に参加した。これらの実験の成果として、同マルチフェロイック特性の起源に関して、重要な知見を得ており、研究計画に対して期待通りの研究の進展がみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
前回のILLでの電磁場下における中性子線散乱実験において、測定条件によって絶縁破壊が起こるという条件決定に非常に時間がかかるなどの問題があった。これらの問題を解決するために物性測定から、マルチフェロイック相における強磁性強誘電性のドメインを一つにするのに必要は電場と磁場の相関を明らかにし、再度電磁場下における中性子線散乱実験を行う。 加えて、オリビン型酸化物A_2BO_4の網羅したダイアグラムの作成を行う。Aサイト及びBサイトのイオン半径や磁性イオン(スピン量子数等)の観点から物性に関する系統的なダイアグラムを作成する。
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Research Products
(5 results)