2012 Fiscal Year Annual Research Report
次世代ガンマ線望遠鏡で解き明かすかに星雲からのガンマ線フレア
Project/Area Number |
12J02058
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
尾崎 圭太 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ガンマ線天文学 / 原子核乾板 / エマルション / 気球実験 / 宇宙線 |
Research Abstract |
本研究では、かに星雲からのGeVガンマ線フレアの発生メカニズムの解明を目指す。2008年にNASAにより打ち上げられたFemiガンマ線宇宙望遠鏡によって、かに星雲からのGeVガンマ線フレアが観測された。よく理解されていたはずのかに星雲からの突発的なフレアは天文業界に大きな衝撃を与えており、フレア発生メカニズムの解明は大きな意義を持つ。 我々はエマルション望遠鏡による宇宙ガンマ線観測計画(GRAINE)を進めている。気球に搭載したエマルション望遠鏡を用いてかに星雲の偏光観測を行うことによりガンマ線フレア現象の解明を目指す。 偏光観測に向けて平成24年度では以下の研究に取り組んだ。 ○SPring-8の直線偏光ガンマ線ビーム照射実験の解析を推し進め、エマルション望遠鏡による偏光検出方法の最適化を検討するとともに、天体の偏光検出感度の評価を行った。 ○Geant4を用いたシミュレーションにおいて、エマルション望遠鏡の直線偏光に対する感度の評価を行った。また、反跳運動量を考慮に入れ望遠鏡のガンマ線に対する角度分解能のより現実的な評価を行った。 また、GRAINEの次の気球実験をISAS/JAXA大気球実験室の協力のもと、2014年5月にオーストラリアで実施する予定であり、次回フライトに向けて以下の研究を進めた。 ○ガンマ線の到来方向を決定する上で不可欠な姿勢モニターを開発し2011年度に実施した気球実験に搭載したが、そこで得られたデータの解析方法の改良を行った。また、次の気球実験に搭載する実機を選定し性能評価を行った。 ○次の気球実験では荷電粒子に対して高いトラッキング効率をもつ新型エマルションフィルムを全面使用する予定である。新型エマルションフィルムを岡崎分子研UVSORに持ち込んで電子線を照射し、その性能評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
偏光感度実証試験の全面的な解析を順調に進め、それに加えてGeant4に最近新たに導入された物理モデルを用いて偏光感度のシミュレーション評価を行うことが出来た。また、掲げた研究目的を達成する上で重要な次の気球実験の飛翔機会を2014年5月に得られる見込みであり、これに向けて当初予定していた姿勢モニターの準備を進めるだけに留まらず、エマルションの性能評価を行うことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
偏光感度実証試験の結果をまとめ論文投稿をする。そして、次の気球実験を成功させるための研究開発を進める。 搭載予定の姿勢モニターの低温低圧環境試験や電磁ノイズ試験を行い2013年9月までにフライトレディにする。 また新型エマルションフィルムはフライト後の砂漠環境下でも高いトラッキング効率を保つことが可能かを評価すると共に、フィルムを平面性よく大量生産する体制を整える。なお、次回フライトにおいて姿勢制御を行うことを検討していたが、姿勢モニターを3台搭載して制御は行わない予定である。
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