2012 Fiscal Year Annual Research Report
高スピン偏極強磁性窒化物のエピタキシャル成長とスピントロニクスデバイスの作製
Project/Area Number |
12J02075
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 啓太 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 強磁性窒化物 / スピントロニクス / 分子線エピタキシー / XMCD測定 / AMR効果 |
Research Abstract |
我々は、新たなスピントロニクス材料として、(CoFe)_4Nと(CoMn)_4Nに注目している。前者は大きなスピン分極率が、後者は垂直磁気異方性が期待される。本年度は分子線エピタキシー(MBE)法により、高品質な(CoFe)_4Nおよび(CoMn)_4N薄膜を作製し、明らかにされていない磁気モーメントやスピン分極率などの基本的な物性の評価を行った。 MBE法により、SrTiO_3(STO)(001)基板上へのCo3FeN薄膜のエピタキシャル成長を行い、X線磁気円二色性(XMCD)測定により磁気モーメントを評価し、異方性磁気抵抗(AMR)効果によりスピン分極率の符号の評価を行った。XMCD測定の結果、Co_3FeN薄膜のFeL_<2,3>吸収端、CoL_<2,3>吸収端、NK(吸収端での明瞭なXMCDスペクトルの観測に成功し、CoおよびFe原子1個当たりの磁気モーメントの値の算出にも成功した。AMR効果の測定では、測定温度に関わらず負のAMR効果が観測され、Co_3FeNのフェルミ準位での4電子の状態密度のスピン分極率、伝導電子のスピン分極率の双方が負であることが明らかとなった。このように、これまでに不明確であったCo_3FeNの基本的な物性である磁気モーメントとスピン分極率について、実験結果により明らかとなったことは大きな進歩であり、今後の研究指針にとっても大きな意味を持つといえる。 また、MBE法により、MgO(001)およびSTO(001)基板上へのMn_4N薄膜のエピタキシャル成長を行い、振動試料磁力計を用いて磁化曲線の測定を行った。Mn_4N/MgO(001)の膜面内および面直方向に外部磁場を印加して測定した結果、垂直方向に磁場を印加した方が開いたヒステリシス曲線が得られたことから、垂直磁気異方性が優勢であるといえる。一方で、Mn_4N/STO(001)は面内磁化膜となったことから、下地の基板の種類によって磁気異方性が大きく変化することが分かった。MgO(001)基板上への(CoMn)_4N薄膜のエピタキシャル成長にも成功し、今後は磁化特性とスピン分極率の評価を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高品質な(CoFe)_4Nと(CoMn)_4Nの作製に初めて成功し、基礎物性の評価を行えた点は大きな進展であったと考えている。Co3FeNのスピン分極率に関して、符号だけではなく、当初予定していた値の評価まで達成できれば更によかった。
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Strategy for Future Research Activity |
理論計算の報告例によれば、Co_3FeNのユニットセルの角のサイトにFe原子が、面心のサイトにCo原子が入った場合に、大きなスピン分極が予想される。しかし、我々が作製したCo_3FeN薄膜におけるCo原子とFe原子の位置は、明らかになっていない。そこで、^<57>Fe原料を用いてMBE法により高品質なCo_3FeN薄膜の作製を行い、メスバウアー測定によりCo原子とFe原子の位置を明らかにする予定である。また、点接触アンドレーフ反射法により、スピン分極率の値の評価も試みる。
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Research Products
(4 results)