2013 Fiscal Year Annual Research Report
1920年代から40年代の中国における政論家の思想と活動
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12J02189
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森川 裕貫 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員PD
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Keywords | 政論 / 章士釗 / 張東蓀 / 煩悶 |
Research Abstract |
本年度は、中華民国時期(1912~1949年)の中国における代表的政論家であった章士釧と張東蒸について、拙論「民国前期における政論家の制度構想――『甲寅』雑誌を起点として」(東京大学大学院人文社会系研究科課程博士論文、2012年6月)の内容を踏まえ、さらに詳細な検討を加えた。その成果をまとめて2014年度中に書籍として刊行できるよう、現在準備を進めている。 なお昨年度に開始した、政論の主たる読音の一角を占めた、10代後半から20代の学生の精神状況についての考察も進めた。 具体的には、第一に、学生たちにとり重要な意味を持った試験制度をめぐる論争につき検討を加えた。五四運動の生じた1919年以降、学生の中で学校での試験を制約と捉え、その廃止を求める動きが活発化するが、その背景には、学生に将来への不安や日常生活での葛藤などに由来する煩悶が蔓延していたという事情が存在した。この点については、森川裕貫「廃止か改良か――五四時期の試験をめぐる論争」などで詳細な報告を行い、その成果を学術雑誌に公表すべく準備を進めている。第二に、多くの学生が文章を発表し、さらに多くの学生を読者として擁した雑誌『学生雑誌』の検討を進めた。同誌には熱心な学生読者からの悩みが多数寄せられており、中華民国時期の学生の精神を理解する上で検討が不可欠な史料である。この点を、同誌の発展に大きく貢献した編集者、楊賢江の目から読み解くべく現在準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、京都大学人文科学研究所を拠点に、多くの史料を効率よく収集することができた。それらを活用して、中華民国時期の政論についての検討をさらに進めた。その成果を踏まえ、博士論文に大幅な加筆・修正を施し、書籍として刊行できるよう準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、京都大学の所蔵する豊富な史料を基礎にしつつ、併せて海外での史料調査も行い、研究遂行に必要な史料の収集と分析を進める。特に, 中華民国時期の政治思想において大きな意味を持った、煩悶の具体的様相について、『学生雑誌』をはじめとする雑誌の検討を通じ、解明を目指す。その成果の一端を、「「良師益友」楊賢江と煩悶青年――『学生雑誌』から見る1920年代中国精神史の一側面」(京都大学人文科学研究所共同研究班現代中国文化の深層構造、2014年5月30日予定)と題して, 報告の予定である。
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