2012 Fiscal Year Annual Research Report
抗うつ薬の作用機構におけるグルタミン酸受容体の役割の解明
Project/Area Number |
12J02192
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永安 一樹 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | うつ病 / セロトニン / オプトジェネティクス / ウイルスベクター |
Research Abstract |
本研究においては、うつ病など気分障害およびその治療におけるグルタミン酸受容体、特に、5-HT神経に存在するAMPA型グルタミン酸受容体に注目し、in vitroの5-HT神経モデルである縫線核脳切片培養系を用いた分子生物学的解析および個体動物における行動学的解析を行うことで、これら受容体が既存の治療薬の効果において果たしている役割および治療ターゲットとしての可能性について検討を行った。 研究実施計画に基づき、レンチウイルスベクターを用いた実験系の確立を行い、ラットの5-HT神経核の一つである背側縫線核にてトランスジーンとして用いたeGFPの5-HT神経特異的(約97%)な発現が見られた。さらにwoodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element(WPRE)配列を組み込むことで、一般に高発現の指標とされる、直接観察可能なレベルのeGFP蛍光を確認した。以上より、ChR2遺伝子を用いた実験に必要となる高発現5-HT神経特異的レンチウイルスベクター(sinTPH-LVV)の開発に成功したと考えられる。同時にマウスTph2遺伝子プロモーターをクローニングし、マウス高発現5-HT神経特異的レンチウイルスベクター(sinmTPH-LVV)の開発に成功した。 薬理学的解析においては、まず、抗うつ薬であるcitalopramを連続投与することでラット前頭前野皮質において5-HT遊離が増強することを見出し、さらにAMPA受容体依存的に抗うつ薬様作用を引き起こすことがしられているケタミンを用いてさらに検討をすすめた結果、ケタミンの単回投与によって、内側前頭前野皮質において5-HT濃度の上昇が起きること、さらに、この5-HT濃度上昇が、背側縫線核内への闇PA受容体阻害薬の微量投与により、ほぼ完全に抑制されることを見出した。以上より、抗うつ薬様作用において重要となる前頭前野皮質における5-HT遊離の背景に、縫線核内5-HT神経におけるAMPA受容体の活動があることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
翌年度計画に必要となるウイルスベクターの大量精製を既に終えており、さらに一部については既にin vivoでの機能評価を行いつつあること。さらに、当初計画よりも多くの行動学的解析を行える点でより有望な、マウスを用いて同様の実験を行うための重要なツールであるマウスTPH2プロモーターを用いたレンチウイルスベクターを作成し、その一部のin vivoでの解析を行いつつあるなど、当初計画以上のレンチウイルスベクターシステム開発を行えたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度作成、精製したウイルスベクターを用いてラットおよびマウス背側縫線核において各種グルタミン酸受容体サブユニットおよびその膜上移行を阻害するペプチドを発現させた際の前頭前野皮質におけるセロトニン遊離および行動学的変化を解析する。さらに種々の光遺伝学的ツールを5-HT神経に選択的に発現させ、5-HT神経のみを特異的に刺激あるいは抑制することで引き起こされる行動学的変化および、LTP、LTDとの類似性について明らかとする。同時に薬理学的解析を行い、あわせて、抗うつ薬の作用機構におけるグルタミン酸受容体の役割について明らかとする。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] 抗精神薬の縫線核培養切片への処置はセロトニンの遊離を引き起こす2012
Author(s)
Kazuki Nagayasu, Maiko Kitaichi, Naoya Nishitani, Nozomi Asaoka, Hisashi Shirakawa, Takayuki Nakagawa, Shuji Kaneko.
Organizer
第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会 合同年会
Place of Presentation
栃木県総合文化センター(栃木県)
Year and Date
2012-10-20
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