2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜上でのGPIアンカー型分子の高速拡散とプリオン病:1蛍光分子追跡による解明
Project/Area Number |
12J02203
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮原 愛美 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超高速1分子観察 / GPIアンカー型タンパク質 / Displaced拡散 / 分子の親水性 |
Research Abstract |
神経細胞軸索の根元の細胞膜には『拡散障壁』があり、リン脂質でさえそこを動くことはできない。しかし私は最近、1分子イメジング法を用いて、リン脂質の仲間であるGPIという脂質にアンカーされたタンパク質(GPIアンカー型受容体)が、拡散障壁内でホップ拡散運動を行い、そこを通過できることを見出した。本研究の最大の目的はこの機構を解明することで、作業仮説は以下の通りである:『GPIアンカー型受容体には、通常のリン脂質と同様の拡散(In-place拡散)を行う状態に加えて、リン脂質のグリセロール骨格が数オングストローム膜外方向へずれたDisplaced拡散という未知の状態があり、両状態間を行き来している。Displaced状態では拡散障壁内の仕切り構造の影響が劇的に減るため、動き回れる』。この検証のためには、従来の方法では時間分解能が足りず機構の解明に至らなかったので、昨年度、私は研究計画の第一歩としてこの問題を解決した。即ち、当初の予定であった0.1ミリ秒時間分解能をさらに4.5倍改善した、世界最速の超高速1蛍光分子観察(22μ秒分解能)を成功させ、分子の拡散の様子や膜ドメインへの滞在時間などを直接捉えられるようにした。 さらに、本実験により得られた1分子の軌跡解析により、GPIアンカー型受容体のホップ頻度が、リン脂質など他分子の頻度を数十~数百倍も上回り、また一度のホップで二つ以上の膜ドメインを超える瞬間があることが発見された。現在は、分子がDisplaced状態を起こす要因を検証するため、GPIアンカー型受容体のタンパク部分をなくしたり、親水・疎水のバランスを変えたりしたモデル分子を用いて研究を進めており、親水性が増すと拡散が速くなるという予備的結果も得つつある。これらは、本研究の仮説を支持する非常に重要なデータである。今後は検証を進め、Displaced拡散の要因と、拡散障壁が分子選択的なフィルターとして働く生物学的意義を解明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡散障壁内におけるGPIアンカー型受容体の拡散運動の様子を、超高速1分子観察法を用いて直接観察できたことで本分子の拡散機構の解明に大きく近づいたことにはじまり、平成24年度に行うべき研究計画をおおむね達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在開発中の人工モデル分子の拡散挙動を通して、Displaced拡散が分子の親水性によって引き起こされていることを証明する。本計画中においても、分子のホップ頻度やその瞬間を直接観察するため、超高速1分子観察を継続して行う。
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