2012 Fiscal Year Annual Research Report
極限環境に生息する氷雪緑藻ボルボックス目の分類学的再検討
Project/Area Number |
12J02217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松崎 令 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 氷雪藻 / 緑藻ボルボックス目 / 分類学 / 分子系統解析 / ITS2二次構造 |
Research Abstract |
東北大学植物園八甲田山分園付近及び山形県立自然博物園内で氷雪藻野外試料の採集を行い、採集した野外試料の光学顕微鏡観察、接合子と思われる休眠細胞(接合子様休眠細胞)と遊泳細胞を用いた単細胞シーケンシング、及び氷雪藻新規培養株の確立を実施した。 先行研究(Muramoto et al. 2008, Cytologia, 2010, Eur.J.Phycol.)で用いられた単細胞シーケンシング法は単離した細胞を直接PCRに用いるため、同一試料から複数回塩基配列を決定出来ない点が問題だった。そこで、単細胞ゲノム解析の手法を応用し、最初に単細胞試料の全ゲノムを増幅する過程を加えることで、同一試料から複数回塩基配列を決定できるよう、手法を改良した。本手法を用いて野外試料中の生活環の各ステージから配列情報を得て、分子同定及び高解像度の複数遺伝子分子系統を実施することで、難培養性で、培養条件下で生活環を完結させることが困難なものの多い氷雪緑藻ボルボックス目の、種の実体解明が期待される。 また、現在までに30以上の日本産氷雪緑藻ボルボックス目の新規培養株を確立し、そのうち山形県立自然博物園内で採集した緑雪から確立した氷雪緑藻クロロモナス属新規培養株は、比較形態解析、3遺伝子分子系統、及び生殖隔離を引き起こすほどの遺伝的差異を推測できると考えられている核ribosomal DNA internaltranscribed spacer 2二次構造の比較(Coleman 2000, Protist, 2009, Mol. Phylogenet. Evol.; Muller et al.2007, RNA)から、新種であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験手法の改良に時間がかかってしまい、野外試料からの塩基配列の決定や新規培養株の確立を十分に実施することが出来なかった。今年度中に野外試料中から配列の一致する栄養細胞と接合子様休眠細胞のペアを得て、生活環の推定を行う予定だったが、現在までそのような栄養細胞と接合子様休眠細胞のペアを得ることはできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は遊泳細胞が優先していると考えられる緑雪を中心に野外試料の採集を行い、試料中にみられる遊泳細胞の光学顕微鏡観察と単細胞シーケンシングを重点的に実施する。接合子様休眠細胞はこれまでに得られたものを中心に複数遺伝子の塩基配列を決定し、野外試料中の遊泳細胞や培養株と配列が一致するペアを探索する。
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Research Products
(9 results)