2012 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類と鳥類における道具使用の認知基盤と環境エンリッチメントへの応用
Project/Area Number |
12J02312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小倉 匡俊 京都大学, 野生動物研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 比較認知科学 / 動物福祉 / 環境エンリッチメント / 道具使用行動 / アカコンゴウインコ / スミレコンゴウインコ / 大型類人猿 / 動物心理学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、動物園で飼育されている霊長類と鳥類を対象に認知科学的手法を導入し、認知能力の進化史を解明すること、および飼育環境を改善する環境エンリッチメントを開発することである。中でも、ヒトに特徴的な認知能力のうち道具使用行動に着目する。ヒトの進化の隣人である霊長類と、系統的に遠いが相同な行動を進化させた鳥類を対象として、道具使用行動の実験を実施し、背景にある認知能力の進化史を明らかにする。また、飼育環境の改善に不可欠である飼育環境に求められる認知要因の解明と環境エンリッチメントの発展にも貢献できる。 こうした研究目的に基づき、実施初年度である本年度は名古屋市東山動植物園を研究のフィールドとして、鳥類と霊長類を対象とした研究およびその遂行のための準備をおこなった。まず鳥類を対象とした研究では、先行研究の事例が豊富であり、飼育施設が研究の遂行のために適していたアカコンゴウインコとスミレコンゴウインコの2種を対象として選定した。申請者がこれまでに利用してきたのとは異なる場所・動物個体を対象とした研究となるため、実験者と対象個体双方にとって必要となる馴致を当初はおこなった。馴致が達成されたことを確認した後、実験の実施のために必要な個体のコントロールを目的として、ターゲットトレーニングをおこなった。続いて認知実験に必要な手順を学習させることを目的とした簡単な刺激弁別課題をトレーニングした。 霊長類を対象とする研究では大型類人猿3種を対象として選定した。道具使用行動を採食場面に導入することによる環境エンリッチメントの評価を目的として、平常時の行動を記録するための行動観察を実施した。まず、行動記録を簡便化し分析を容易にするため、行動記録用のモバイルアプリケーションを開発した。このアプリケーションを用いて行動観察を実施し、平常時の行動時間配分および行動レパートリーについて分析をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新たに開拓する研究環境の整備と、今後の詳細な実験および分析に必要な基礎データの収集を実施した。3年間の研究計画のうちの初年度であることを鑑み、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した研究はおおむね順調に進展しており、今後も研究計画通りに研究を推進できる。具体的には、研究のフィールドとして整備した名古屋市東山動植物園での実験と観察を継続してデータ収集をおこない、道具使用行動に関わる認知基盤と環境エンリッチメントとしての効果の評価を実施するとともに、対象個体数の少なさを補うために他の動物園でも研究できるようフィールドの開拓をおこなう。
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Research Products
(9 results)