2012 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族カップリング反応による単結合生成を鍵とした新規多環式芳香族化合物の合成
Project/Area Number |
12J02319
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松野 太輔 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 芳香族カップリング反応 / らせん型分子 / 自己集積 / 光触媒反応 / 有限長カーボンナノチューブ / C-Hホウ素化反応 |
Research Abstract |
本研究は,芳香族カップリング反応を用いて多環式芳香族化合物を複数の単結合により連結することでナノカーボンのモデルとなる分子を合成し,その物性・構造を解析し,有機化学的な観点からのナノカーボンの物性・構造の解明を目標とするものである.本年度は,(1)ナノカーボンモデル分子合成のための有用なビルディングブロックである2,11-ジブロモ-5,8-ジブチル[4]ヘリセンのX線結晶構造解析を行った.我々は以前に,対応するジメチル体が,単一のエナンチオマーがカラム状に積層したパッキング構造を有することを報告している.今回構造解析を行ったジブチル体においても,同様のカラム状積層構造の形成がみられたが,ジメチル体が分子の向きを揃えて積層していたのに対し,ジブチル体は交互に上下を逆にして積層した.これは,置換基を変えることにより,単一のエナンチオマーによる積層構造は保ったままにそのパッキング様式のコントロールが可能であることを示した成果であり,このような積層構造をもつらせん型分子の設計に向けた重要な知見であると考えられる.また,(2)短期留学中の研究成果である,銅錯体を用いた可視光駆動の光触媒炭素-炭素結合形成反応の開発を報告した.イリジウム,ルテニウム等のレアメタルが必要とされていた可視光駆動の遷移金属触媒反応において,安価な銅錯体がこれらの代替となりうることを示した成果である.さらに,(3)芳香族カップリング反応を用いた新規な有限長カーボンナノチューブ分子の合成に成功した.ビルディングブロックとなるカップリング前駆体の合成には,我々が前年度に報告している,多環式芳香族化合物のイリジウム触媒を用いた位置選択的直接ホウ素化反応を活用した.今後,新規有限長ナノチューブ分子の構造解析とさらなる構造の多様化を行うことで,新規物性・新規機能の発現につながるものと期待している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は芳香族カップリング反応により多環式芳香族化合物を連結し,種々のナノカーボンモデル分子の合成・構造決定を行う計画であった.本年度はビルディングブロックである多環式芳香族化合物の構造解析と,複数の有限長カーボンナノチューブ分子の合成・構造決定に成功しており,研究は計画通りおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度において合成に成功した新規有限長カーボンナノチューブ分子の化学構造・物性の解析を行う.構造・物性の解析には,紫外可視吸収スペクトル,核磁気共鳴スペクトル等の各種分光学的測定と,X線結晶構造解析・量子化学計算等を活用する.また,新規有限長カーボンナノチューブ分子のさらなる構造の多様化を行う.構造多様化のために,まず置換基の導入や変換が容易な複数の官能基を有するビルディングブロックの合成を試みる,合成が完了し次第,これを芳香族カップリング反応により連結し,多様な構造を有する有限長カーボンナノチューブ分子を合成する.
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Research Products
(4 results)