2013 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族カップリング反応による単結合生成を鍵とした新規多環式芳香族化合物の合成
Project/Area Number |
12J02319
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松野 太輔 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多環式芳香族化合物 / 単層カーボンナノチューブ / 芳香族カップリング反応 / 幾何学的指標 |
Research Abstract |
本年度は, 前年度に引き続き芳香族カップリング反応を用いたナノカーボンモデル分子の合成と構造・解析が目標であった. 本年度はπ系を伸長した新たな有限長カーボンナノチューブ(CNT)分子の合成を行い, また, 有限長CNT分子の幾何学的構造を評価する指標を考案した. 以下に詳細を示す. 1. π伸長した有限長カーボンナノチューブ分子の合成と構造 : CNTは一般に様々な構造の混合物であり, その構造化学的解析のために純粋な「分子」として取り扱うことができる有限長カーボンナノチューブ分子が望まれている. このような分子はこれまでに数例報告されており, 当研究室でもクリセンを輪状に連ねた[4]シクロクリセニレン([4]CC)を報告している. 本年度の研究では, より大きなπ系をもつアンタントレンを連ねた[4]シクロ-2,8-アンタントレニレン([4]CA)を合成し, その構造解析によってCNTに関する構造化学的知見を得た. [4]CAの合成にあたっては, 原料として工業的に大量生産されている赤色顔料を用い, 高効率な合成法を確立した. X線結晶構造解析によって歪みの小さいチューブ状分子構造と興味深いバンドル様のパッキング構造をもつことを見出した. 2. 有限長カーボンナノチューブ分子のための幾何学的指標の考案 : CNTの構造は一般にカイラル指数という一組の整数を用いて表される. カイラル指数からはCNTの直径や円周の長さなどを導くことができるが, これまでに有限長のCNTの長さを示す指標は存在しなかった. そこで今回, 有限の長きを評価することのできる「有限長指標」を考案した. これは有限長CNT分子のカイラル指数と分子構造から得られる指標であり, 有限長CNTの長さを容易に定量比較することができる. 実際にこれを用いて上述の[4]CAと[4]CCを比較したところ, [4]CAにおいて有効なπ系の伸長が達成されたことを明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究申請の段階において, 2年目の目標はモデル分子の合成・構造解析・物性評価を通してナノカーボンに関する構造化学的知見を得ることであった, 本年度は, 新たな有限長カーボンナノチューブ(CNT)分子の合成に成功し, CNTの化学的性質に関する重要な知見を得ることができた. また, 有限長CNTの幾何学的指標を考案した. 当初の目標を達成し, さらに有用な新指標を提案することができた. 計画以上の進展があったと評価する
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きナノカーボンモデル分子の構造多様化とさらなる物性探索を行う. 構造多様化にあたっての一つの目標は有限長CNT分子のさらなるπ系の伸長である. 物性探索にあたっては, 光物性や電気化学的物性の解析が興味深いと考えている
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Research Products
(6 results)