2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02414
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野依 修 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フィロウイルス / レセプター / nonmuscle myosin heavy chain IIA / 病原性 / 立体的遮蔽効果 / integrin β1 / MHC class I |
Research Abstract |
(1)フィロウイルスの細胞侵入機構の解明 当研究室はこれまでにフィロウイルス感染を特異的に低下させるモノクローナル抗体M224/1を作出している。本年度はM224/1を用いて免疫沈降後、銀染色、またはウェスタンブロッティングを行い標的分子の検出を試みたが、標的分子を検出するには至らなかった。 フィロウイルスは、細胞膜表面においてレセプターと結合した後、エンドサイトーシス、またはマクロピノサイトーシスにより細胞内へと取り込まれると考えられている。そこで様々な分子のエンドサイトーシスに寄与しているNon-muscle myosin heavy chain IIA(NMHC-IIA)がフィロウイルスの細胞侵入時に果たす役割を解析するため、NMHC-IIAノックダウン細胞、または安定発現細胞に対するフィロウイルス表面蛋白質(GP)をもつシュードタイプウイルスの感染価を検討した。その結果、どちらの細胞株においても野生株と比較して優位な違いは観察されなかった。 (2)フィロウイルスの病原性に及ぼす立体的遮蔽効果の影響解析 近年、GPが細胞間応答、免疫応答に関わる様々な宿主因子を立体的に覆い、その機能を阻害する現象(立体的遮蔽効果)が報告された。本研究ではマールブルグウイルス属のAngola株、Musoke株のGPによる293T細胞膜表面に発現するIntegrin β1、MHC class I分子に対する立体的遮蔽効果を解析した。その結果、流行発生時の致死率が最も高かったAngola株GPの方がMusoke株GPよりも両宿主因子に対する立体的遮蔽効果が強いことが分かった。さらにMusoke株GPの547番目のアミノ酸をAngola株由来のアミノ酸に置換したGPでは、野生型Angola株GPと同程度の遮蔽効果が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はフィロウイルス種・株間の病原性の違いに寄与するGPの機能解析、およびフィロウイルスの侵入時に関与する宿主分子の同定を行い、当感染症の予防・制圧に向けた基礎的知見を得る事を目的とする。本年度はM224/1の標的分子を同定するには至らなかったが、フィロウイルスの侵入に寄与する可能性があったNMHC-IIAの機能解析を予定通り遂行することができた。またフィロウイルスの病原性に及ぼす立体的遮蔽効果の影響解析について、GPの遮蔽効率とフィロウイルスの病原性の強さとの間に相関性が見られ、立体的遮蔽効果はフィロウイルスの病原性にも寄与している可能性を提示できた事に加え、GPの構造中で遮蔽効率に深く関わる領域を特定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
M224/1の標的分子については引き続き同定とその機能解析を行う予定である。具体的にはVeroE6細胞を用いてcDNAライブラリーを作成し、その中から標的分子を同定することも検討したい。GPの立体的遮蔽効果による宿主因子の機能阻害効果を検討するため、単球、マクロファージ等の抗原提示細胞上に発現したGPは、リンパ球への生存、増殖シグナル伝達を阻害するのか検討する予定であったが、これら抗原提示細胞に効率的にGPの遺伝子を導入することは難しい。そこで、遺伝子導入が容易に行える細胞を用いて立体的遮蔽効果による宿主因子の機能阻害効果を検討したいと考えている。具体的には、ウイルス感染細胞に対しアポトーシスを誘導することはウイルス感染防御機構として重要であるが、GPはHela細胞膜表面に発現するFasに対しても立体的遮蔽効果を示し、アポトーシス誘導シグナルを遮断するのか検討したいと考えている。
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Research Products
(2 results)