2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヒグマとサケを指標とした、海洋-陸域生態系間ネットワークの評価手法に関する研究
Project/Area Number |
12J02469
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松林 順 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヒグマ / サケ / 開発 / 安定同位体食性分析 / Mixing Model / GIS / イオウ安定同位体 |
Research Abstract |
平成25年度は、24年度までに入手したサンプルのイオウ同位体比を行った。このデータを炭素・窒素安定同位体分析データと組み合わせることで、ヒグマによるサケの利用をより正確に把握できる。実際に、知床半島のヒグマ個体群全体を対象にC・N・S同位体を用いてMixing Modelによる食性解析を行いC・Nのみの場合と比較したところ、全ての食物資源で推定結果の信頼区間の範囲が減少しており、より正確な推定ができていることが示された。イオウデータの追加により、より推定幅が広くなりやすい個体レベルの解析で、特に大きな効果を発揮されるだろう。 得られたイオウ同位体データを加えたうえで、Mixing Modelによって個体ごとにサケ利用割合を推定した。次に、個体の捕獲地点の位置情報をGISに記録し、またサケに関するデータ(標高、河川工作物の有無、河川勾配など)から河川ごとにサケ遡上可能域を算出した。その他の土地被覆(農地、道路、市街地、森林、水域)データは国土地理院及び環境省が公表している基盤地図情報、現存植生図より取得した。これらのデータを基に、各土地被覆がヒグマのサケ遡上域までの移動に及ぼすコストを推定するモデルの構築を試みた。 モデルリングの結果、ヒグマの移動ルートとして適すると考えられる森林の移動コストは非常に小さな値で維持されたのに対して、その他の土地被覆の移動コストはいずれも高い値を示した。従って、作成したモデルは各個体のサケ利用割合を推定する上での各土地被覆の影響を表現することが可能だと考えられる。ただし、一般的にモデルは100,000回以上の試行回数が必要とされており、ここで記した手法はRとGISを手動で別々に操作している事から、一回の試行で5分程度を費やしている。今後は、モデルの実行速度の上昇と単一のシステム上で解析を行えるように改善を加える必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の遂行に必要なデータは25年度歪でに全て入手済みであり、また解析の結果も概ね想定通りとなっていることから今後研究計画に大幅な変更が生じる可能性は低いと考えられる。従って、上記のとおりの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒグマの捕獲地点ごとのサケ利用割合を説明するモデル構築が主な課題である。基本的なモデルの構造はすでに確定しているが、試行に要する時間をどれ程短縮できるかが最大の問題点であり、独力で順調に進まない場合は解析関係に明るい研究者に指導を仰ぐ必要があるだろう。
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Research Products
(1 results)