2012 Fiscal Year Annual Research Report
多成分バクテリオシンを介した乳酸菌の生き残り戦略の解明とその利用に関する研究
Project/Area Number |
12J02491
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石橋 直樹 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 乳酸菌 / バクテリオシン / エンテロシン / トランスポーター |
Research Abstract |
多成分のバクテリオシンを同時に生産する珍しい乳酸菌が見出されており、それぞれの抗菌スペクトルや諸特性が多様性に富むことから、それらバクテリオシンあるいは乳酸菌自体を利用した、より高度な微生物制御の実現が期待されている。本研究では、多成分バクテリオシン生産乳酸菌の生き残り戦略の解明を通して、高度な微生物制御を実現する足掛かりとするだけでなく、微生物生態学への新たな知見を提供することを目的としている。本年度は、多成分バクテリオシン生産乳酸菌のモデル生物であるEnlerococcus faecium NKR-5-3を用いて、1.多成分バクテリオシン生産乳酸菌のバクテリオシン生合成遺伝子群の解明、および2.マルチプルトランスポーターの分泌能解析を試みた。1.では、本菌株の生合成遺伝子群のうち生合成や自己耐性、生産制御に関与すると予想される遺伝子について機能解析を行った。異種発現および遺伝子破壊の結果、ABCトランスポーターと相同性を有するEnt53Tは、本菌株が生産する5つのバクテリオシンうち4つ(エンテロシンンNKR-5-3A、C、D、Z)を菌体外に分泌することが明らかになった。また、エンテロシンNKR-5-3AおよびZ、エンテロシンNKR-5-3Cのそれぞれに対する自己耐性遺伝子も特定された。一方、誘導ペプチド(エンテロシンンNKR-5-3D)をシグナルとしたバクテリオシンの生産誘導に重要な転写因子やヒスチジンキナーゼをコードする遺伝子(ent53R、enl53K)も本生合成遺伝子群内に発見され、それら遺伝子破壊によりバクテリオシン生産誘導に関与することが明らかになった。2.では、バクテリオシン前駆体が有するリーダーペプチドに注目し、Ent53Tの基質認識におけるその重要性について解析した。Ent53Cのリーダーペプチドを変異させた構造遺伝子とent537を共発現させた株のバクテリオシン分泌能を評価した結果、リーダーペプチドの配列自体はEnt53Tの基質認識に大きな影響を与えないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
E. faecrum NKR-5-3が生産する多成分バクテリオシンの生産機構がおおむね明らかになったことで、研究目的である多成分バクテリオシン生産乳酸菌の生き残り戦略の一端を解明することに成功した。一方、多成分のバクテリオシンを分泌するマルチプルトランスポーターの詳細な分子機構については計画よりもやや遅れてはいるが準備は進んでおり、次年度に研究の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、多成分バクテリオシン生産乳酸菌が有するバクテリオシン生産制御機構の解明を行うのと共に、それら乳酸菌間における生き残り戦略について解析していく予定である。また、マルチプルトランスポーターの分泌能解析については、今後も継続して行っていく。
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Research Products
(8 results)