Research Abstract |
本研究では, 2次元フォトニック結晶ナノ共振器における非線形光学効果の1種であるバンドフィリング効果を用いることで, 集積化, 高速動作および低消費電力を同時に満足する新規光論理ゲートの提案を行うとともに, その設計理論を構築し, 省電力光ルータ実現のための基盤研究を推進することを目的としている. 本年度の研究では, 非線形光学効果を評価するための3次元ベクトル有限要素法ソルバを新たに開発した. 具体的には, はじめに, 極めて性能のよい吸収境界条件である完全整合層を有限要素法に取り入れた定式化を行った. 次に, より高精度な解析を行うために, 要素としてLTQN四面体エッジ要素を導入した. 本手法は, 最終的に固有値問題を解くことになるが, 固有値方程式を解くためのアルゴリズムとして逆反復法を採用し, 連立方程式を解く問題に帰着させている. 開発の完成フェーズにおいては, 既存の非線形光学効果評価手法との比較検討を行い, 本理論の妥当性および有用性を証明した上で, 精度評価を行い, 解析規模についての限界を明らかにした. また, 本年度の研究においては, 非線形光学効果を増強できる構造として1次元フォトニック結晶結合共振器型光導波路に基づくスロット導波路や, スロットナノビーム共振器に基づく1次元フォトニック結晶結合共振器型光導波路を提案し, これらの非線形光学係数はシリコン細線導波路と比べて20倍以上であることを明らかにした. 高い非線形光学係数が得られる道理は, フォトニック結晶結合共振器型光導波路によるスローライト効果とスロット導波路による高非線形媒質と光の相互作用効果をうまく融合させることにある. このように非線形光学効果を増強可能な光共振器構造を特定することは, バンドフォリング効果に基づく低消費電力光論理ゲートの高性能化を行う際に有用な指針となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究では, 非線形光学効果を評価するための3次元ベクトル有限要素法を開発するとともに, フォトニック結晶結合共振器型光導波路によるスローライト効果とスロット導波路による高非線形媒質と光の相互作用効果を融合させることで, 低消費電力化に必要となる高い非線形特性が得られることを明らかにした. また, ラベル処理回路のための光論理ゲートとして位相情報を保持可能なAND, OR, NAND, NOR光論理ゲートを提案した. 一連の研究成果については, 筆頭著者または共著者として国内外で17件の発表を行うとともに, IEEE発行の学術論文誌にフルペーパーとして4件採録されていることから, 研究が順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 平成25年度の研究で開発した非線形光導波路のための3次元ベクトル有限要素法を駆使して, 極低消費電力を達成する光論理ゲートを提案する. このとき, NOR光論理ゲートは, あらゆる論理回路が構成できる基本ゲートであるため, 優先的に設計指針を提示する予定である. 続いて, 論理演算回路全体の素子数を減らすことを目的として, その他の光論理ゲートを提案する予定である. また, 光論理ゲートに最適な光ナノ共振器の構造を探索するとともに, その限界を突破する新たな設計基準と探求する.
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